Kuri

おやすみなさいを言いたくてのKuriのレビュー・感想・評価

4.5
ひとことでいうと、素晴らしい。
たいした数はみていないですが、今年見た中で一番の作品です。

母娘が頬をくっつけた写真を使ったメインビシュアルと、この邦題からは
ちょっとホッコリした話を想像してたのです。
見始めてみて、"アメリカンスナイパー"や"ハートロッカー"といった作品の名前が頭に浮かび、あれ?ちょっと違うな、と。
それでも、ひとつの家族の物語をなぞったかたちをとって決着がつくような流れだったので、ナルホドナルホドと思ってハンカチで涙を拭ったりしていると、

物語の外から暴力的で無慈悲な現実が殴り込んでくるのです、ガツンと。

鑑賞直後には、
物語をあざ笑うかのような意地悪な結末に映ったのですが
パンフレットを買って読んで(今年初めて)、自分なりに整理してみるだに
人間の強さとはなんなんだろうか?という疑問を深く強く投げ付けられたように感じます。

主人公である母親は親子関係において、正解に行き着いたように思えたのに
それでも、だからこそ、
とることを期待されている行動をとれなくなってしまう。

そんな彼女を描くことで、
世界を知らなくちゃいけないと背中を押される気になるんです。
まるで作中での彼女が撮った写真のように。

誰もが同じように感じるかはわからないけど、
物語の力ってこういうものだ、と改めて思わされた作品でした。
Kuri

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