真田ピロシキ

太秦ライムライトの真田ピロシキのレビュー・感想・評価

太秦ライムライト(2013年製作の映画)
3.0
現在注目の若手アクション俳優 山本千尋の映画初出演作品。『鎌倉殿の13人』で暗殺者善児の弟子トウとしてその身のこなしと「ずっとこの時を待っていた。父の仇!」と積年の思いをぶち撒けて善児を殺した演技に感心して、過去の出演作の中でも一番良さげな本作を選択したのだが何というか非常に地味な印象を受けた。

と言うのも本作は斬られ役の伝説である福本清三への敬意を込められて福本清三その人な年老いた斬られ役俳優最後の花道を描かれていて、あたかも福本のファンムービーかのよう。福本を知ってはいるが特別時代劇に思い入れもない自分にとっては主人公にそこまでの興味が抱けなくて、恥ずかしいことだが先人へのリスペクトの欠片もない若手監督やアイドル俳優に感覚が近いという。プロデューサーが言ってた「お客さんにとっては知らないお爺さんなんだよ」という言葉が当てはまってしまう。申し訳ない。同じように大部屋俳優に一世一代のスポットライトを当てた『蒲田行進曲』と比べると華がそしてパワーが圧倒的に足りなく感じられて仕方がなかった。リスペクトを表すにしても必ずしも本人を使う必要はなかったのでは?

衰退する時代劇への思いもあるが、これもあまり響くものがなく。途中久しぶりに撮られる時代劇はアニメ原作のトンデモ系で、しかも主役のアイドル俳優が信長を演じるのに月代は嫌だから鬘を変えさせる始末。言いたいことは分かる。近年で当たった時代劇と言えば『るろうに剣心』でアクション映画としてはクオリティ高かったが、真剣に時代劇としてやるならアレじゃダメだろう。千葉真一が「あれはゲームの映画だよ」言っていたように黄金期を体験してた人には納得がいくはずない。そういう思いは想像できるのだけれど、実際問題として大河ドラマなどを例外として時代劇というジャンルを望んでいる人がそんなにいない以上、好事家ではない身ではノスタルジーに付き合っているようでノれない。山本千尋など時代劇を愛する若手が何人かいて、彼ら彼女らへの継承をもっと描かれていれば今後の時代劇も見えてきたのではと思ったのだが、福本清三映画の本作にはその要素は薄い。さぞベテランの方が撮った映画なのかと思ったらかなり若くて驚いた。劇中人物では山本千尋視点の人だったのか?

山本千尋が福本清三から手ほどきを受けるシルエットの画など良いなと思うシーンはいくつかあって、「立ち回りができる役者は芝居ができる役者だ」という台詞も鎌倉殿での彼女を思うと大いに納得できる。時代劇ファンじゃなくても、山本千尋ファンなら見る意味はある映画かと思います。