掛谷拓也

オールド・ボーイの掛谷拓也のレビュー・感想・評価

オールド・ボーイ(2013年製作の映画)
3.0
理由もわからず長年ビルに監禁されていた主人公が解放され、誰がなぜ自分を何年も監禁したのかの謎を解くという日本の漫画原作のハリウッド映画。原作とは違い、イギリスの上流階級家族が抱える闇と近親相姦タブー、キリスト教的葛藤という普遍的なテーマに置き換えられている。主人公がなぜ長年監禁されていたのかという謎が明らかになり、娘に会えそうになるラストシーンからどんでん返しはハリウッド版ならではの脚本力。96年から98年にかけて漫画アクションで連載されていた原作漫画を当時連載を追いかけて読んでいた。結末を考えないまま連載していたというのでどう収拾をつけるのだろうとハラハラし、最後はそれなりに納得する結末だった。25年ぶりに原作漫画を一気読みした後にこのハリウッド版を見た。原作連載当時はバブル崩壊直後。監禁犯は、陰鬱な少年時代を過ごしたあとバブル景気で大儲け、バブル崩壊も才覚で乗り切り経済的には満たされた大金持ち。しかし、なぜそんなことで思うような些細で、周りの人から見れば理不尽な個人的恨みを主人公に対して抱き、長年大金をかけて監禁、復讐するという筋書き。バブル後期には、高度資本主義で経済的に満たされた金持ちが子供時代の些細な不全感から欠落を抱えるというストーリーがよくあった。またそれが人間らしいと感じてしまうような、ロマンチックな感想がありえた。原作漫画を読んでそのことを思い出した。今から考えると、浅はかでリアリティのない欠落かという感想しかない。バブル期の日本の資本家のイメージは高度資本主義に傷つき、欠落を抱えるというモデルが中心であり、ハリウッド版では、そんなモデルでは映画が成立しなかったのだろう。評判のいい韓国版は見ていない。