穂苅太郎

ファーナス/訣別の朝の穂苅太郎のレビュー・感想・評価

ファーナス/訣別の朝(2013年製作の映画)
3.6
スコット・クーパーは「クレイジー・ハート」が大好きで、アル中ミュージシャン役のジェフ・ブリックスが手放さなかったバーボンウイスキMaker's Markを未だに愛飲している。「クレイジー・ハート」は悲哀を込めたペーソスがありつつ最後はわりかし明るく終わっている。今作のキービジュアルとも考え合わせるとクリスチャン・ベールが無双する復讐劇で、そうなるとウディ・ハレルソンがヴィランだよな当然、と思って軽い気持ちで見始めてしまった。しかも脇固めてるのがフォレスト・ウィテカー、ウィレム・デフォー、ゾーイ“ガモーラ”サルダナ、さらにサム・シェパードときた。これはオールスターキャストの娯楽大作って思うじゃんか。

いやいや終始とことん暗いから。寒そうだし鉄工所ってことはラストベルトあたりかなと思って調べたらペンシルバニア州の田舎の話なんだな。劇中のバーのシーンでオバマの演説が出てくるがそれを見ているおっさんは褒めも貶しもせずただただ諦めの表情をしてたのが象徴的。政治なんかじゃどうにもならない閉塞感が漂っている。
もうほとんどディストピアなんだがアメリカ国民の結構な割合でリアルなんじゃないかと。そりゃある種の権威主義や個人崇拝に行きたくもなるよな。

でもこの暗さ、けして嫌いじゃない。
穂苅太郎

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