タキ

007 スペクターのタキのレビュー・感想・評価

007 スペクター(2015年製作の映画)
3.9
前3作とは毛色が違う。007らしさを全面に押し出す昔懐かしい作り。しかしクレイグボンドのウェットな部分はほどよく残っていて多少の物足りなさは感じたが充分楽しめた。
メキシコシティでの死者の祭りの真っ最中、ターゲットの暗殺を図ったらテロ用の爆発物もろとも建物が倒壊するも無傷のターゲットは逃走し、これまた無傷のボンドも追いかける。両者ヘリに乗り込み、上空で繰り広げられるアクションは笑っちゃうほどド派手だし、改造アストンマーチンでのカーチェイスなど、古き良きボンドシリーズを彷彿とさせてちょっと懐かしい。そしてなんだかわかったようなわからんようなスペクターというやたらワールドワイドな組織の名前を久々に聞いた感がある。なんとスペクターの名前を映画に出すのは(大人の事情で)30年ぐらいぶりとのこと。

最大の敵「スペクター」とは何か? ボンド映画の歴史を振り返る
https://realsound.jp/movie/2015/11/post-369.html/amp

ブロフェルドといえば長毛のモフモフ猫を膝に置いてナデナデしてる顔出ししたりしなかったりのスキンヘッドのオジサンのイメージしかしなかったが、本作ではタランティーノ作品でクセのある役どころを演じたクリストフ・ヴァルツが顔出しで登場し、ボンドと因縁浅からぬ人物として描かれる。しかしなぜそれほど自身の父親とボンドを憎むのか肝心なところは詳しく語られない。ブロフェルドがカッコウの托卵の話をしていたので実父が血の繋がりのある自分よりもジェームズを可愛がっていたからぐらいの理由なのだろうか。どうもこのシリーズ、拗らせオジサンばかりでてくる。Mも亡くなったとはいえ、ボンドにメキシコシティでのミッションを遺言として残し、こちらの擬似親子関係も続いている。スペクターに繋がる手がかりとなるミスターホワイトにも娘がいてこちらの親子関係も複雑そうだ。
ボンドを取り巻く面々も魅力的なのだがチラ見せほどでもどかしく、スピンオフがあればぜひ見てみたい(劇場公開がアレならテレビシリーズとか配信とか)新しいMは現在は政治家なのだが元軍人という役どころでちょいちょい武闘派の名残りが見えてワクワクする。Qの面白グッズ制作やマネーペニーの秘書に止まらない活躍なんかももっと見てみたい。
ボンドとボンドガールのハッピーエンドも昔懐かしい007シリーズを思わせる。次はクレイグボンドのラストステージとなる。最新作を見たい気持と寂しすぎてもうちょっと置いておきたい気持ちとの間で揺れ動いている。
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