タキ

おみおくりの作法のタキのネタバレレビュー・内容・結末

おみおくりの作法(2013年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

孤独死をした人の葬儀をとりおこなう民生課のジョン・メイの物語だが、それはさながら彼自身の終活について考えているようでもあった。対象者の遺品を整理し、親族友人を探し、宗教も調べ、葬儀で流す曲も選ぶ。過去を遡るように調査をしていくのだがちょっと探偵のようで面白そう。しかし、彼自身の物語は紡がれることはなく、おそらく身寄りも友人もいないのだと想像できる。自分のお墓も見晴らしのよい場所にするとすでに決めていて、自分の未来を見据えているように、孤独に逝った人々に寄り添い続ける。役所から解雇通告を受け、最後の案件が向かいのアパートに住んでいてもその存在すら知らなかったビリー・スタークという男。破天荒な彼の人生を追ううちに真面目で几帳面な彼がほんの少しだけハメをはずす様子がほほえましい。ベルトを輪っかにした時にギョッとさせといて実は…でホッとして笑って、幸せがそこまで来てると油断してたらアッッッと声が出た。あんなに熱心に葬儀の用意をしてくれたジョン・メイが姿を現さないことに不穏なものを感じるケリーの視線の横を共同墓地に向かう車が通る。なんと切ない。たったひとりの“友人”ビリー・スタークへはメイがこうあってほしいと願った完璧な葬儀を。そしてメイ自身には22年寄り添ってきた“彼ら”が参列する。いやでも、ケリーと幸せになって欲しかったなぁ…44歳なんて若すぎるよ。
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