タキ

モリコーネ 映画が恋した音楽家のタキのレビュー・感想・評価

3.8
マカロニウェスタン以降から語られることの多かったモリコーネの音楽人生の初めから終わりまでを網羅した本人インタビューたっぷりのドキュメンタリー映画。
さぞかしこだわりの強い気難しい人かと思いきや「もし10人の作曲家が同じ監督と仕事し同じ作品に曲をつけたらすべて違う音楽になるだろう。映画のスコアを書くことがいかに難しいかという話だ。〈答え〉が多いなら〈最もふさわしい音〉を決めるのが監督の仕事だ。これが作曲家の苦悩なのだ。」と、見かけと真逆の発言。かと思えば、なかなか監督からOKがでず、腹が立ってこのゴミ(曲)でも使えと叩きつけて帰ってきたり、映画の中で人の曲をつかうならオレは書かんとゴネたり、言うことは言うスタイルでそのギャップも面白い。
お父さんがトランペッターとしてもうダメだとわかった時にトランペットの入る曲は書かなかったという繊細さが本当の彼なのかもしれない。
ずっと映画音楽にコンプレックスを持っていたというエピソードから二度逃したオスカー受賞への流れはやはりグッとくる。ヘイトフル・エイトでウェスタンに復讐するというのも御大らしい言い草で、自分のキャリアをまだアップデートする気満々でカッコイイ。
だれもが認める映画音楽のレジェンドとなった。それでも彼はこう言うのだ。
「音楽は書く前に熟考せねば。それが問題だ。曲作りを始めると必ずその問題に直面する。作曲家の前には白い紙がある。そこに何を書く?そのページに何を書けばいいのだ?まずは思考があり、それを展開させる。さらにその先へ。でも何を…追求する?分からない。」
音楽を前に飽くことのない無垢な魂がうごめいているようだった。
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