橘宏樹

思い出のマーニーの橘宏樹のレビュー・感想・評価

思い出のマーニー(2014年製作の映画)
4.3
残留思念は強く、孫すら呼び寄せる。

孫をいたわるために化けて出たのですらない。やり場のない寂しさが、時空を超える。愛する孫すら、慰みにする。遊んで打ち捨て、笑顔でまたすり寄る。生なきゆえに、実に無邪気に。

悲鳴と怨嗟が虚なサイロに轟々と唸る。美しい湿原への愛と執着でも慰まることはない。慰まるわけがない。満たされることもない。思い出はつら過ぎて、振り返ることも忘れることもできない。ただ、どこにも行けない。物心つかぬ赤子の枕元で、何をつぶやいたか。思い出を語り、ようやく、仏に近づいたか。

空恐ろしき幻。分別の落ち着いた夏の終わり。優しき孫の胸の中でようやく眠る。
橘宏樹

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