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アントワーヌとコレット/二十歳の恋のSariのレビュー・感想・評価

3.8
アンジェイ・ワイダ、石原慎太郎など総勢5人の監督が手がけた国際オムニバス映画『二十歳の恋』(1962)のフランス篇として制作された。

『大人は判ってくれない』から3年後ー20歳になったアントワーヌ・ドワネル青年の初恋が描かれる。

思春期を過ぎたアントワーヌ・ドワネルはレコード会社に勤めクリシー広場に面した部屋に住んでいる。最初はレコードの包装を担当していたが、製造部に昇進したドワネルが、一枚ずつレコードをプレス機にかけて制作するシーンが印象的。
青年音楽会のコンサートでコレットに一目惚れした彼。楽団の演奏を背景に、二人の視線の交わりをカットバックで映し出す演出が、恋に落ちた瞬間を鮮烈に描いている。
ドワネルは殆どストーカーまがいの大胆な行動に出て彼女の向かいに引っ越すが、つれなくされる。他の男と出かける彼女を横目に彼女の両親と過ごす始末...滑稽かつ哀愁漂う感傷的な愛が描かれている。

物語の設定は自由という条件の中で、当初トリュフォー監督はヒットに便乗したシリーズものの映画を毛嫌いし、あからさまな続編としてではなかったが、ジャン=ピエール・レオーを再度起用し、撮影が進むにつれ構想が膨らんでゆき、ドワネルものとしてついにシリーズ化を決意。

レオーは僅か3年の間に、まだあどけなさを残しながらも、髪型も七三分けになり、後の見慣れたレオーに近く成長を遂げている。
冒頭のオープニングのナレーションで、家出をして少年鑑別所に送られた17歳のドワネルが精神科医の助けを得て更生したという説明や、劇中で『大人は判ってくれない』でドワネル少年が友人らとベッドで煙草を吸って悪戯をするシーンが加えられている。
トリュフォー監督は「気楽に撮った作品で現実の人生に近いので撮影が楽しみでした。」と語っている。

撮影監督ラウル・クタール、音楽はジョルジュ・ドルリューという一流制作陣である。


2022/10/23 DVD
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