乙郎さん

夢は牛のお医者さんの乙郎さんのネタバレレビュー・内容・結末

夢は牛のお医者さん(2014年製作の映画)
2.0

このレビューはネタバレを含みます

12/17@よしもと南の島パニパニシネマ

 小学校の頃、牛の世話をしたのがきっかけに獣医になった女性の歩みを26年分の映像で語る。
 まず、26年分映像素材が残っているというのがすごい。仮に、途中でこの女性が夢をあきらめちゃったりしたらそれまでの素材が全部パーになるわけだし。だから、こうやってドキュメンタリーとして一本成立しただけでも素晴らしい。

 ただ、個人的には、映画の評価とは関係ないところで、すごくコンプレックスを感じてしまった部分は、ある。
 何て言うんだろう。結婚式に参加した時に、新郎新婦の紹介映像を観て、はたして自分の今までの人生を編集して、こんなにいい人生だったと思えるようなものが出来上がるんだろうかと思ってしまう感触に似ている。
 このドキュメンタリーの一応の主人公は知子さんという方なのだけれど、小さいころからの夢を叶えるために努力し続け、また叶えてからも日々仕事に従事する様は、単純に素晴らしいと思うし、見習わなければいけないところも多い。
 それはわかるのだけれども、例えば彼女が仕事の息抜きに何か音楽を聴いてたりとか、そういった趣味に費やす部分が出てきたらもっと入り込めたかもしれない。家族の口から「仕事が趣味みたいなものだから」という台詞が出てきたけれども、僕にはそれがちょっと正しすぎて、まぶし過ぎた。

 とはいえ、こう思わせられて、皮肉な話だけれども「映画なんか観ている場合じゃないのかもしれない」と思わせられ、自分の仕事観や夢について考えさせられた時点で、この映画は成功していると思うんです。
 この映画は知子さんが幼いころに無意識かもしれないけど「夢」を手にし、少しずつ現実のものにしていく過程をわずか86分で描く。その夢の尊いところは、もちろんそこに彼女自身の喜びも含まれているのだろうが、その夢の目指すところが、人の役に立ちたいという点であることだ。彼女が新潟の酪農を支える力の一部になることで、僕らが普段口にする肉や牛乳が届けられている。
 そういった、あたりまえかもしれないことを気づかせてくれたという点で、このドキュメンタリーは素晴らしい。

追記 ナレーションはAKB48の横山由依が担当していた。彼女の努力に関する考え方は非常にしっかりしており、この映画のテーマにも通じると思った。
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