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団地妻 昼下りの情事のshibamikeのネタバレレビュー・内容・結末

団地妻 昼下りの情事(1971年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

白川和子という女優を自分は今日まで知らなかったが、「ロマンポルノの女王」として凄い女優だったのですね。
本作上映後のご本人トークショーがとても面白かった。(後述)

知らず知らずの内に、昼下がりの団地妻はエロいというイメージを持っていた。
この謎のイメージは本作の大ヒットによるものと知り、驚いた。
何でも元ネタがあるのですね。
(個人的に吉本新喜劇の桑原和男扮する老婆が乳をいじくられ過ぎると「ガクッ」と果てるヤツも本作の影響と推察するが、違うか?)

青空の下、各家庭の洗濯物や布団をベランダに干す団地。
さんざん昼ドラやなんかで見たであろうド定番の話で、
仕事に疲れた夫が夫婦の営みを適当にして、団地妻の欲求不満が高まり、
不倫や売春に走ってしまう、というアレ。

冒頭、夜に交尾中の笠井夫婦。
一見したところ、あんあん盛り上がっているようだが・・・
あ!夫が果てた!あ!夫、自分がスッキリしたら、
即座に妻に背中を向けて睡眠に入った!
物足りなそうにジトーっと夫を見つめる妻。
口を開く妻「ねぇ、あなた。私、まだなんだけど・・・」
「勘弁してくれ。仕事で疲れてるんだ。」
でたー!何かよく見るヤツ!
という訳で笠井の奥さんはあくる日からゴツイおもちゃで自慰に耽ったりするが、ご近所の悪い奥さんに弱みを握られて、
あっという間にコールガール組織の一員に。
細かい話だが、台所にふきんがあり、「ふきん」と印字しているの吹いた。

最終的に妻の不貞を何も知らない夫が仕事の取引を成功させるため、
取引相手にコールガールを使って接待するのだが、
ラブホテルに自分の妻が登場するというミラクルですべて明るみに。

ただ、ここからが凄い!!!

笠井の奥さんがご近所の悪い奥さんともみ合いになって、
ご近所の悪い奥さんを殺してしまう。
笠井の奥さんはたまらず飛び出す!
向かった先は同級生の不倫相手の家。
「私・・・人を殺しちゃった!ウワーン!」
突然のとんでもカミングアウトに不倫相手は
「どこか遠いところへ行こう。」
と、ぶっとび提案。

場面変わって、車を飛ばす2人。
くねくねの山道。
あれ?いつの間にか二人とも素っ裸?
え?笠井の奥さん、相手のチ○コ咥えてるやん!運転中よ、危ないよ!
ほら、ハンドリングがふらふらして覚束ないよ!
あーーーー!!
と、イッて逝くというアメリカンニューシネマもヌーベルヴァーグもびっくりのラスト。
あまりの凄さに笑い声、歓声、拍手が劇場に起こった。


白川和子は惜しげもなく裸体をさらし、おし殺しても漏れる喘ぎ声の色気。
顔が清水富美加(法名:千眼 美子)に似ていると思った。
おっさん連中のやらしくてマヌケでスケベ顔。
激しく求め合う男女。官能の台風であった。

うぶだった笠井の奥さんがコールガールの仕事をこなすうちに床上手になっていくのも面白い。
「幼い身体が急激に爛熟した」
控えめな腋毛もナイス!

当時の衝撃やいかに。


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本作上映後に1時間程度、主演 白川和子氏のトークショーがあった。
(聞き手:轟夕起夫氏)

ロマンポルノの女王の壮絶な半生にビビった。
市原悦子に憧れ、新劇が演りたいと女優を志す。
当初、ピンク映画をやっていたところ、
潰れかけの日活からロマンポルノ映画の話が来る。

監督 西村昭五郎が白川氏に尋ねる。
「どんな役が演じたいですか?」
若き乙女 白川氏は答える。
「ヨゴレ役がやりたいです。」
自分は度肝を抜かれた。
白川氏は長崎の田舎生まれで、
土の匂いのする女優をしなくてはいけないと考えており、
「ヨゴレ役!」と信念を持っていたらしい。
女優ってお姫様とかキンキラの美女とかとにかく
イケてるヒロインをやりたいもんだと思っていたが、
この白川氏の発言は本当に度肝を抜かれた。
「この人、タダ者じゃねぇ・・・」
とただならぬ予感がするが、このあと話はさらに
自分の予想をはるかに上回る。

本作は23歳頃に撮影したらしいが、あえぎ声とかが
本人はよくわからなかったらしい。
知り合いに奇跡的にラブホテル経営者がおり、
コップを壁にあてるという原始的な盗聴で生の喘ぎ声をラブホテルで勉強していたという苦学の話に涙。

映画に出て素っ裸でラブシーンをする女優というのが、当時、世間からどういう扱いだったのかという話は凄まじく、
「妹の結婚破断、父(公務員)の退職騒動、自身へのいじめ」
など脱ぐのやめなよ・・・と思わず言っちゃいそうになるほどの逆風が襲い掛かったそうな。
しかし、「映画の灯を絶やさない!」という目標に向かって、
製作陣と協力して撮影をこなしていった。
当時は「ダーティフィルム」とも呼ばれたりもしていたらしい。

著名人にファンが多かったらしく、
三島由紀夫と対談、大島渚監督からの激励、美空ひばりからもロマンポルノの女王として認知されていたなどのエピソードにほっこり。

自分が出演する作品は劇場に見に行っていたらしく、
事務所の広報の人(男性)とある日、出演作を観に行った際、
真っ暗な劇場で上映中、ガサガサ新聞紙のこすれる音があっちこっちから聞こえ、不審に思い、広報の男性に聞くと
「映画に発情した男性観客がナニしている」
と言われ、ショックを受けるも、
即座に耳を澄まして何人がナニしているかを数え、
「5人か・・・次回作は10人に増やしてやる!」
という肝っ玉ぶり!すごすぎ!

フジテレビ「笑っていいとも!」のテレフォンショッキングに出演した際には初対面のMCタモリから「大変お世話になりました。」
と言われ、どういう意味だ?と疑問に思うも、また例のアレだとわかると「そうか・・・タモリさんも新聞紙のメンバーか」と許容。

ロマンポルノ女優という肩書にずっと苦しんでいたが、最近、孫とお風呂に入ったとき、孫が自分の裸を指差し、「ロマンポルノー!」とキャッキャッはしゃぐのを見たりする内、最近肩の荷が下りてきたとのこと。実に45年にも及ぶ苦悩。時の流れは何もかも癒す。

ロマンポルノが売れなかったらソープ落ちの瀬戸際だった、とか結婚し、団地に住むことになるも団地の住人達から署名運動されて、迫害されそうになったり、自身の人生がまさに映画そのもので聞く話すべてが刺激的であっという間のトークショーでした。

「色気とは女性のやさしさ」
とても美人でお茶目で素敵な方でした。
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