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ニンフォマニアック Vol.1のハターのレビュー・感想・評価

ニンフォマニアック Vol.1(2013年製作の映画)
3.5
ここ数ヶ月の間に劇場へ足を運んでる人ならお分かり頂けるかと思いますが、ああもハードコアな風を吹かせた予告をバンバン痴気痴気(造語)流されたら、それは見たくなるのが性というものです...!このニンフォマニアックは2部作である為、2本で1作品ととるにしても、Vol.1の感想を先ず。

冒頭、シャルロット・ゲンズブール扮する色情狂の女”ジョー”が、ボロボロになって倒れている所を老紳士に拾われる所で、予告編にて幾度か耳にしたラムシュタインのタイトルコールが早速響き渡る。目に明らかな陰を纏い、頑な態度を示すジョーを見て不審に思った老紳士は、理由を話そうとしない彼女に何があったか話して欲しいと言い、一杯の紅茶を差し出して、言葉を選びつつ歩み寄る。ジョーは次第に気持ちを和らげ、性的快感への目覚めを皮切りに、自らの経験を少しずつ語りだします。

およそ一般的な思考とは異なるキャラクターが自らの過去を語り、ジョーの回想をメインにストーリーは展開してゆく。
...む?何か似たような映画を最近見たな...と思い返したら、イエジー・スコリモフスキの『シャウト』だった。『シャウト』は叫びで人を殺める能力を持つ人間が、親切な夫婦の妻を寝取って性の虜にする話で、本人による過去の回想シーンをメインに展開する構成となっている。『ニンフォマニアックVol.1』も、性に執着する女が愛を否定し色狂いになりゆくまでの回想が主となっている。共通するのは、両者ともその語り手が常人ではなく、そして色欲モノである事。この設定と演出の相性はなかなかどうして、妙な説得力を覚えました。

また、事細かな演出に一癖ある。男釣りと魚釣りとをリンクさせたユニークな例え話や、処女喪失の際ピストンされた回数に数式を用いるといった部分は、テーマの過激さを抑える為のある種”まやかし”かな、と。そう勘ぐる私自身の言い方にも一癖ありますが、実際この比喩表現は巧みだと思いました。ユマ・サーマンをメインとしたチャプターでは、アメリカンを匂わせるジョークを効かせ、思わぬ展開で笑いを誘ってくる。あと、個人的にクリスチャン・スレイターを久しぶりに見れてちょっぴり感激。

Vol.1を見終えての感想は、早く続きを見たい!ライトなニュアンスでとっつき易さを与えてからのVol.2をどう表してくるのか。期待せざるを得ない状況を作ってきたトリアーには、きっと企みがあるんじゃなかろうか、と彼の過去の作品を数本見ている身としては頭を捻らせてしまいます。しかし、なにやら手のひらで転がされてる感覚が微かながらもあるのは気のせいだろうか...。
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