雨丘もびり

ニンフォマニアック Vol.1の雨丘もびりのレビュー・感想・評価

ニンフォマニアック Vol.1(2013年製作の映画)
5.0
しずかな対話。
雨の路地で拾った傷だらけの女が、初老の男に語る半生。
   
「私は悪い人間なの」
水底に膠着したままの女を浮上させようと、男は話題のルアーを放る。

釣り、昆虫の成長、ポーの短編、バッハのポリフォニー、フィボナッチ関数。
世界に散らばっている"美"のかけらで、女の心を惹く。

.....触発されて、女は水面に泳ぎだし、
自分のなかの物語を、水泡にして吐き出す。
女は、身体(からだ)に結び付けて理解し、身体が反応することだけ話す。
究極、自分の内面しか意識しない。
男は、外の美にしか、惹かれない。
↑なんでもかんでも黄金比ハメるの最高(笑)
   
男の慰めの言葉が女にまったく響かないのリアルw。
話したいから寄る。掌握されそうになると離れる。
思い通りいかないでじれる男。
釣りですわ。
   
実人生を悲観したい女と、女の人生を賞賛したい男。
どっちも平静を装い、確実にムキになってゆく。
この二人の会話のゆくえ、わくわくする。
   
本作の人間観・視点は、私にとても馴染む。
ジョー(女)の内罰性には、太宰治みたいな自己陶酔が無くて寄り添いやすい。
漱石みたいな湿っぽさも無いしね。
彼女の"疲れ"がしっとり沁み込んでくる、居心地の良い映画。
女の昔語りがどのように現状に結びつくのか、男の真の目的は何か、追いたくなった。
    
中身のない人間と、空洞な人間は違うのね。
でもまだ、正体は明かされない。ふふふ。
2も観ます。