このレビューはネタバレを含みます
未来に確実に病で苦しんで亡くなる人間を、その苦痛を取り除くため、病が発症する前に殺して回る、予知能力を持った犯人
同様の能力を持ちFBIに協力して犯人を追い詰める、アンソニーホプキンス演じる医学博士
実は、彼は犯人と同じことを以前にしている
最後のシーン、病床で苦しむ実の娘に、これ以上の苦痛を取り除き安らかな死を迎えさせるために、モルヒネを注射して安楽死させる過去が描かれている
犯人が殺害しているのは、未来に確実に苦しむが、まだ病を発症していない人々である
犯人と医学博士の違いは何なのだろうか
どちらも、病人の未来の苦しみを取り除いているという点では同じである
アンソニーホプキンス演じる医学博士は、犯人に対峙して言う、「人生が終わりを迎えるときは実に尊いものだ、その瞬間は身体に感じる苦痛さえも愛おしい…」
犯人は、彼に言う
「娘もそう感じたか?苦痛が愛おしいと…」
彼は答える
「申し訳ないが、君が理解できるまでは待てない」
思うに、「人生が終わりを迎える…その瞬間は身体に感じる苦痛さえも愛おしい」という医学博士の言葉は、犯人が言うようにその苦痛が愛おしいと感じるかどうか、そういう話をしているわけではない
その苦痛 ”さえも” 愛おしいと思えるほど自らの生が愛おしく感じられる、そんな尊い瞬間であるといっているのである
ただ、医学博士の娘がそんな尊い瞬間の中で息を引き取ったかというと私にはわからない
犯人の言葉を敷衍すれば、医学博士の娘自身がそんな尊い瞬間を感じていなければ、結局は医学博士も犯人と大して変わらないのではないかとも思えるのである