忘れれば、この世は幸せ
嘆いてばかりは意味がない
職がないのは、無愛想だから?
借金だけが、増えていく
恥もプライドも捨てられず
異国での再スタートを夢見た
息苦しさは、西も東も同じ。
世界は灰色。
ウクライナ⇔オーストリア、
交わることのない男女の人生。
生きるために、働く。とはいえ、仕事は簡単には見つからない。
何かを変えたくて、国を出る2人。
どこへ行っても、弱者は無力。権力を手にして強者になるか、心を無にして仕事をこなすか。
ウクライナでは看護師でも、オーストリアでは病院の清掃員にしかなれない。
この物語における幸福とは、忘却。
懸命に働く人々ではなく、入院している認知症の患者がいちばん幸せなようで、とんでもなくアイロニカル。
社会は、凍てつく冬のように厳しく、薄暗い。
そんな世界のことは忘れてしまえ、と言わんばかりのラストが強烈。
ゆるい雰囲気のビジュアルに反して、突き刺すような現実を、ユーモアとアイロニーで包み込むラスト。
もはや投げやりのような、最大限の優しさのような。
これはとんでもないぞ、と思った。
(とんでもないは褒め言葉)
なかなかにパンチの効いた作品で、
ロイ・アンダーソンの
『スウェーディッシュ・ラブストーリー』を観た時と同じような感覚になった。
やっぱり、彼らはどこか似ていると思う。
ウルリッヒ・ザイドルとロイ・アンダーソン。
総じて、たいへん好みです。