天津甘栗

みつばちの大地の天津甘栗のレビュー・感想・評価

みつばちの大地(2012年製作の映画)
3.8
ミツバチを通して世界の縮図を具現化し、現代のヒトと自然の在り方について問題提起するドキュメンタリー。

超接写で大きく映し出されたミツバチたちの、身体中を覆う体毛、薄く透けた羽根、真っ黒な眼の光沢が美しい。

人間の食物の3分の1は、ミツバチがそれらの花々を往き来して、受粉を助ける役割を担うことによって得られた恵みであるという。
私たち人間はミツバチの習性に支えられ、生きているのだ。
その為、かのアインシュタインはこう言った。『ミツバチが絶滅すれば4年後に人類は滅びる』と。

現在、世界的にミツバチは急速に減少している。日本も例外ではなく、北海道の養蜂場などでも原因不明の大量死が明らかとなっている。
直接的な原因は謎だが、その要因は無数にある。
作物への農薬散布、延命を目的としたハチへの抗生物質の注入、ハチミツ効率的採取の為の群れの分断、大量飼育による寄生虫の蔓延、巣箱の長距離移動に伴うストレス。
それらすべての要因で人間が介在している。

ミツバチにとって、自然の摂理を犯しまくる人間の手は、神の手であり悪魔の手。
群れを分断し、女王蜂を置き換えて交配を促し、働き蜂たちに人間が選択した作物や女王蜂を育てさせ、抗生物質で生き長らえさせ、殺している。

すべては効率を重視した利益至上主義による人間の都合。より人間が豊かになるため、ハチ本来の生態系を蹂躙しているのだ。
とてもやるせない気持ちになる。
天津甘栗

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