Risa

アラビアンナイトのRisaのレビュー・感想・評価

アラビアンナイト(1974年製作の映画)
5.0
『千夜一夜物語』
なんと8世紀に原型があったというから驚きです。アラビアンナイト=千夜一夜物語。

さぁ、遂にパゾリーニ、生の三部作目です。

離れ離れになってしまった若い男女が、再び出逢うまでの話の中に いくつもの話を 挟み込んでおります。

大昔からの話であるが為、パゾリーニらしく、沢山盛り込んである 性行為は、更に 今までと比べると極めて 原始的。

始まって早々、特別感が全くない行為が さらさらと。いかに人間にとって 生理的、当たり前な行為、それでいて、人間が愛の欲望によって動かされているか映し出されます。

人類がいかに 欲望に突き動かされ、欲望に悩み、ここまできたのか。
人間というのは、創造が得意な動物、あくまでも動物。

音楽はエンニオ・モリコーネで美しい なのに、ブチっと切ったり、急すぎる入りだったり、敢えての綺麗過ぎる使い方をしない崩し方は 嫌いじゃないです。

最初こそ、なんと つまらない原始的な性行為なのだろう、と思ったものの、最後のシーン 二人が目を合わせた時、どっと涙がでたのです。
間に沢山の違う話を織り込むことにより、最後まで辿り着くまでに 色々なことがあり過ぎたように思ってしまい、結果、愛と欲望の奥深さを垣間見て知ることになってしまったので、涙が。

やられてしまった。
一つ一つの話は 下らなさもあり、とても良いとはならないのですが、全て終わった頃には 様々な集約を経て 感じるものがあります。
これまでのオムニバス2作は 順番に 話が終わっていったのですが、3作目を見て、オムニバスというものは、小さな色々話を垣間見て、大きな事を得なさいとでも 言われているようです。
今まで やれオムニバスは下らないと 鑑賞を間違ってはいなかったかい?とでも言われているような。

国や時代の違う三部作、王家の恋愛、庶民の恋愛、不貞、嫉妬、様々な下らない愛で 現代まで命が繋がっているんだなとも、、

無数の情報を得て、俯瞰して捉えていくと、世の中の摩訶不思議な事というのは 減っていきます。パゾリーニの物事の捉え方が見えてきました。

三部作の中で 結果的には一番の作品。


-----------これ以降 ネタバレ有りです---



印象的なお話がいくつかあるので、忘備録させて下さい。

アジザのお話。
結婚式当日に、寄り道をすると偶然目のあった美女に恋に落ちてしまいます。
なんと、それを それまで愛していたアジザに相談するのです。聡明なアジザは 馬鹿だが、純粋なところを愛していたのでしょう。美女もまた聡明な人。アジザの言う通りにすると 美女はなびくのです。
アジザは ついに絶えられなくなり、 自殺をしてしまいます。
『誠実は美、不誠実は甘美』
阿保な主人公は純粋な故に騙されて、他の人と結婚をし、子供まで。アジザの死から1年後に美女を訪ね、そこで、妻子がいる事を告げると、、そんな男に興味は無いと、美しい詩を言えた主人公は命さえ助かるも、男でなくされてしまいます。なんと、大勢で男のブツに縄をかけられます。恐らくは、引っ張りチギリ取られてしまいます。

悪魔のお話
盗賊に襲われて 死んだふりをして生き延びた王子。
木の下で 地下を見付ける、そこには白人の美女が。しかし、その女は悪魔に捕らえられた女、2人は愛し合ってしまいます。
悪魔にバレ、美女は 手足を、そして、首を切り落とされます。
そして 男は 猿に。
その後、人間に戻してくれる女が現れますが、その替わりに女は燃えて消えてしまいます。

島の地下室で少年を殺す青年
幼い少年を騙して背中から刺し殺します。
この描写はなかなか辛いものが、、

また別の話に、
『真実は一夜の中には無い、複数の中に、、』みたいな台詞があります。
悪夢をみて、男嫌いになった女性が、その夢の内容を美しく描かれた天井画を見て 涙を流します。

古い映画は、恐ろしい描写も 物語の中の様な 最近のリアルな描写とは異なるので、ギリギリ見れます。パゾリーニの芸術美有りき。なので、 問題作 ソドムの市も観てみようと思います。
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