しゃにむ

マダム・イン・ニューヨークのしゃにむのレビュー・感想・評価

4.8
「自分を愛することを知れば古臭いものも新しく素晴らしく映る」

<カレーにインドーを渡せ ‼︎ >
いいカンジーですね。

・あらすじ↓
インドの伝統的な専業主婦シャシ。一見幸せそうなマダムだが彼女には足りないものが2つあった。愛情と尊敬。夫はシャシを料理人としか考えていないし子供はからきし英語がダメなシャシを小馬鹿にしている。そんなある時ニューヨークに住む姪の結婚式に招待される。英語の出来る夫と行く手はずだったがシャシは独りニューヨーク行きを決意。言葉や異文化の壁に泣くこともあるがシャシは向上心のある女性だった。英会話教室に通いながら自分の自信を取り戻して行く。

・要約
要するに主婦の大反乱です (そんな物騒な話ではないので語弊がありますが)

・愛と尊敬
日本人の感覚からすると性別役割分担という古い考え方は馴染みが深い。夫は外で働いて稼いできて妻は家(内)を守る。どうやらインドもそんな感じのようで本作の主役シャシは旧弊的な典型的な専業主婦でした。

シャシの旦那さんはバリッバリのステレオタイプです。女は家事育児をするもんだ、と頭から考えてシャシの存在意義を勝手に決めつけている。インドではそんな風潮が普通なのかシャシはムッとしても言い返さない。

さらにムッとするのは娘。当初シャシはヒンディー語の教育しか受けておらずジャズをシャァズと間違えて小馬鹿にされます。生意気盛りゆえに良く反抗します。シャシが娘から尊敬を感じる可能性は絶望的です。

彼女の豊かな生活に足りないもの…それは家族から与えられる愛と尊敬だと思います。

・表現の自由
旧弊的な家庭ではシャシが幾ら不満を感じようがそれを表現する自由がありません。あちらではそれが当たり前だから。大げさに表現すれば彼女に表現の自由は無いも同然。

場所は変わりニューヨーク。耳垢のついた常套句ですがアメリカは自由を謳う場所。木こりが大統領になろうが、マッチョマンが州知事になろうが何でもありですからね。

基本的かつ不可避な最大の問題をクリアすればの話です。それはやっぱり英語。シャシはヒンディー語は堪能でも英語は全然ダメダメ。カフェで意地悪な店員に急かされて注文出来ず泣いてしまいます。元から向上心があったシャシは英会話教室に通います。

古臭い主婦なんてとんでもない。少女のようにみずみずしい好奇心に満ち溢れています。新しい言葉に出会い日々感動。英語が上達する度に充実感に満たされる。たぶんインドにいた頃には無かった充実した日々。無限に湧き上がる自信。長くて灰色だった家庭生活で失われていたプライドを取り戻します。

自分にプライドを取り戻すと自分を愛することも同時に覚えます。英語が彼女に与えたものは表現する自由。そこから生まれたのは失っていた愛情と尊厳です。長年お腹の中に溜め込んできた不満や不平を英語が表現することを可能にしました。これは自己実現に繋がります。そして旦那や娘へのささやかでカレーな仕返しになります。最後の卒業スピーチはスカッとする。ナンと素晴らしい。

・その他余談
マダムが美しすぎた。M・Jの如く「ポゥ!」と叫ぶ姿にキュンとしましたね。インドの映画は精神的に癒されます。かなりオススメ。今回は新しいものが英語だっただけでこれは普遍的に当てはまることだと思う。要するに新しいものに挑戦すること。マダムのスピーチの言葉がまた嗜好。何かにムッとして見返したい方の指針となるお話では。マダムの昼食会にお呼ばれしたいものです。
しゃにむ

しゃにむ