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イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密のtransfilmのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

アカデミー賞8部門にノミネートされ、脚色賞を受賞した
今年最も高評価を受けた作品の一つ。ということで、期待してみました。

この映画の主人公は、第二次世界大戦中に、ドイツ軍の暗号「エニグマ」の解読を試みた数学者です。

人間は、人それぞれ必ず異なってる。
人によって興味をもつものは異なるし、学ぶことも違うし、
どんな仕事につくかも違う。
でも、どんな人間にも必ずあるのは、「なぜ、この人はこういう人間になったのか?」という、その人の生き方を決定づける本質的な出来事があるということだと思う。
この映画、ジャンル分けするなら間違いなく伝記映画なんですけど、一映画ファンとして伝記映画に絶対にやっていてほしいと思うことがあって、それが
「何故この人はこう生きたのか?」ということがわかる、本質を描いてほしいということです。

個人的には、この映画はちゃんとそれをやってくれていて、
- アラン・チューリングはなぜ数学者という生き方を選んだか? - ということにつながる、本質的な出来事を見せてくれたと思う。

アラン・チューリングはなぜ数学者になったか?の答えは、
僕は、最初にクリストファーから暗号の本を手渡されたときのアランのセリフにあったように思う。
この映画を観ると、アランにとっては人の曖昧な発言の意味をくみ取ることこそ最も難しい暗号解読だったようで、
暗号の本を渡された時のアランのセリフを聞くと、
アランは、「人とのコミュニケーションが極端に下手」ということに強い嫌悪感をもっていて、それを何とかして克服したかったんじゃないかな。
アランが暗号を学び始め、そして数学者になるまで数学にのめりこんでいったのは、アランにとって数学は「コミュニケーション」の代用品みたいなものだったんじゃないかなと思いました。

そしてもう一つ、アランの自己嫌悪、孤独感を強くしたものがあって、それが「アランは同性愛者であった」ということ。
この当時、イギリスでは社会的に同性愛への理解がなかったようで、それも原因の一つだと思う。
結果的に、アランは「何故自分はこんなにも普通ではないのか」という自己嫌悪を持っていたように思う。
アランがジューンを遠ざけた原因も、「同性愛者である」ということだけが原因ではなく、アランが根本的に自己嫌悪をもっているから、うまくやっていける自信がなかったんだろうなと思う。

個人的には、この映画は名作!と思わずいいたくなるくらい
素晴らしいシーンがあって、
それが、キーラ・ナイトレイが演じたジョーンが最後のセリフを言うときです。

ジューンの最後のセリフは、アランの生き方を完全に理解し、アランが何に悲しんでるかを完全に理解した、アランの本質を完全に見抜いてるセリフだと思う。
そしてこのセリフには、僕自身はかなりハートを射抜かれました。
ただの映画から名作映画に変わる瞬間って、このたった一言があるかないかだけじゃないかな。と思えるくらい、この映画の価値を一気に高めるような決定的なセリフだったと思う。こういうセリフがある映画は本当に素晴らしいです!。

このセリフだけで考えるなら、ジューンはこれだけアランのことを理解しているのだから、心の奥深くでアランとつながっていたんだろうと思うけど、
ただ、実際に映画の中で描かれたジューンとアランの関係をみると、このセリフを言うにはちょっとだけドライだったんじゃないかな。と思ったのが、この映画で唯一けちをつけたいところ。

でも、最初に書いた通り、この映画は今年最も評価された映画の一つですよね。
観終わった後の感想としては・・・

はい!。
この映画はその評価に値する本当に素晴らしい映画です!
キーラ・ナイトレイの最後のセリフ一つで、この映画は自分の中にあったハードルを超えました。
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