YasujiOshiba

砂漠の流れ者のYasujiOshibaのレビュー・感想・評価

砂漠の流れ者(1970年製作の映画)
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備忘のために

- NHK-BS録画でようやくキャッチアップ。噂ばかりで実は見たことがなかったのだけど、この感涙モノの傑作をHDで見られるのだから受信料払う価値あり。

- 国旗に感動させられるなんて思わなかった。西部に駅馬車によるネットワークは星条旗の理念は、結局のところ、ケーブルホーグのような荒野のさすらい人たちが見つける泉がなければ成り立たない。トカゲとガラガラヘビとコヨーテと、みわたすかぎりの荒野の見出される泉は、いわば原始キリスト教的というところ。対照的なのが、あのきれいごとのキリスト教徒たちだとすれば、ケーブルホーグのかつての西部の星条旗もまた、西部なき時代の(ヴェトナム戦争を戦う)アメリカの星条旗と対置されるものなのだろう。

- ステラ・スティーヴンスを初めて見たのは、この映画の2年後の『ポセイドン・アドベンチャー』だったっけ。たしかアーネスト・ボーグナインの奥さん役。プレイボーイで有名になった女優さんらしいけど、エロスというよりは、その無邪気な生命力によってヒルディという娼婦役を立ち上げているよね。彼女の肉体がそこにあるだけで、サンフランシスコでお金持ちと結婚し腹上死させて自由になったなんて話にも信憑性が生まれるし、腹上死(ストローク)という彼女のセリフに大笑いができるのだ。ヒルディ/ステラは、消えゆく西部劇を、いつまでも記憶にとどめてくれるヒロインなんだよな。

- ラストシーン。見逃せないのは、もちろん自動車もサイドカーもそうなんだけど、あの水を飲みに来たコヨーテの姿だろうな。捨て犬のように首輪をしたコヨーテというのがポイントなのだろう。トカゲで始まり、そんなコヨーテで終わるバラード。このバラードがいつまでも歌い継ごうとするのが、はためく星条旗の下のあばら屋で都会のベッドで戯れるケーブル・ホーグとヒルディの影。

ああ、いい映画みた。
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