shibamike

お母さん、いい加減あなたの顔は忘れてしまいましたのshibamikeのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

2018年11月某日。ヤフートップニュースに”遠藤ミチロウ”の文字が。
「おや?」と思い、記事を見ると「遠藤ミチロウ、すい臓がん公表。現在自宅療養中。」といった内容で驚いた。手術は無事終了したとのことで、完全復活を祈るばかりです。


2011年に還暦を迎えた氏のソロツアーやTHE STALIN復活ライブの模様を追いかけた内容の映画。4日間限定で新宿K'sシネマでリバイバル上映。しかも1,000円。K'sシネマ、サンキュー!(堀内孝雄)

直近の状況を映しつつ、キャリアの総括的な内容も見せてくるのかと思っていたら、そういったものはほとんどなく、生まれ故郷やお母様が登場するなど、がっつり遠藤道郎本人のルーツが映されていて、「さらけ出してきやがった!」と驚いた。遠藤ミチロウのルーツ探訪という狙いがこの作品にはあるのであらう。そして、3月11日の東日本大震災・原発事故にも真正面から向き合っており、氏が携わった「プロジェクトFUKUSHIMA!」の模様なども観ることができる。

冒頭に野外で「天国の扉」を歌っている映像が流れるが、曇天模様の中、雷がもの凄い音を立てながらのライブで、曲の雰囲気と非常にマッチングしており神がかっていた。

年に多いときで200本以上ライブをするらしく、全国になじみのライブハウスやバーがあり、そこのご主人達が何人か登場する。全員もれなく良い人そうであった(笑)。宇和島の猫も可愛かった。あと、広島で登場したライブハウス?のご主人が来ていたグリーン・デイのTシャツが凄くカッコよかった(アルバムdookieのジャケ)。

ツアーで奄美大島を訪れるシーンでは、吉本隆明の影響で興味を持ったという島尾敏雄の記念碑?を訪れる。奄美大島はずーっと植民地支配されてきた土地ということや故郷と似ていることなどから、思い入れが強いとのこと。

ライブシーンも多数流れる。プロジェクトFUKUSHIMA!で披露したTHE STALIN 246は楽器隊がガンギマリで迫力凄かった(クハラ、山本、kenken)。

氏が作る歌は、歌詞が意味不明だけど言葉の凶暴さとビートの絶妙さで全身にズシンとくる、という印象がある。「お母さん、いい加減~」もそういった歌の一つだと思う。本作の中で、「お母さん、いい加減~」について話すシーンが出てくるが、歌詞の意味がどうこうという話ではなく、「本当に母親が苦手なんだ。」という結構意外な告白をしていて口がポカンとした。「よく、”お母様を深く愛してらっしゃるんですね”とか言われるけど、それは深読み。実際は逆。」とひょうひょうと話していて、口がまたポカン。自分は深読み派だった。

そのお母様が本作には、まさか!まさか!で登場する!見逃し厳禁のハイライトシーンである。日本パンク界カリスマの母親登場である。いやぁ、良いシーンでしたわ(笑)。THE STALINが週刊誌にてキワモノ扱いされて悪名を世間に轟かせていた時、その週刊誌でお母様は自身の息子が東京でとんでもないことをしているというのを知り、近所から「遠藤さんとこの息子さん、キチガイになってしまった。」と言われていたとか最高だった。「そういうこと(THE STALIN)をするんだったら、(実家には)もう帰ってこなくていい。」とお母様がミチロウに言ったっていうのも痺れた。本物の表現者は家族とも闘ってるんだなぁと感心した。
ミチロウが「実家に帰りたいと思ったことがない。」と言っていたのも、田舎出身の上京組には結構うなずきポイントと思う。自分も無い(私が薄情なだけか)。

「誤解から人間関係は始まる。誤解と理解はほとんど同じ。」とこちらがドキッとするようなことをサラッと言うところがやっぱり詩人だなぁと思わせた。

日本パンク掛け値無しのカリスマなので、日本全国(海外にも)に思い入れのある人が数え切れないほどいると思います。僕もそうです。ミチロウはアイドルです。
自分が20歳くらいの時、自分が住んでいた田舎の町にミチロウが弾き語りライブをしに来ました。本当に小さな町で、その町の図書館の2階にあるちょっとしたイベントスペースでミチロウはライブをしました。この映画でもあったようにやっぱり「オデッセイ・1985・SEX」では「やりたいかー!!」の大絶叫で始まり、パイプ椅子に座った僕ら田舎もん50人くらいは硬直し、無言で場内はシィンと静まり返りましたが、そんなもんミチロウにとっちゃ屁でもなかったんだなと今では思います。ライブの終演後、出待ちをしてベトナム伝説にサインを貰ったものは今も大切に持っています。

柴三毛 心の一句
「天ぷらが 虫になったら よろしくね」
(季語:天ぷら→空っぽ→頭→堅い→スイカ→夏)
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