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誘導尋問のGreenTのレビュー・感想・評価

誘導尋問(1995年製作の映画)
3.0
冤罪で7年間も刑務所に入れられ、裁判続きで、家族全員全てを失うというヒドイ話です!(ちなみに実話です!)

1983年、カリフォルニア州マンハッタンビーチで保育園を営んでいたマクマーティン一家。園長さんはおばあちゃん、事務はお母さん、息子のレイと娘は先生、そして数人の従業員で構成されていた。

ある園児のお母さんが、息子が保育園でレイに性的虐待されたと告発し、裏を取るために他の園児たちにもインタビューをするのですが、それを請け負ったのが国際児童研究所のキー・マクファーレンって女性なんだけど、邦題の『誘導尋問』にあるとおり、「性的虐待を受けた子供は絶対にそれを言わない」という前提の基に、「そんなことされていない」って言っている子供に「本当のことを言いなさい」と誘導尋問していく。

んで、このマクファーレンのボーイフレンドがTVレポーターで、メディアに大きく取り上げられるんだけど、子供たちはレイだけでなく、マクマーティン一家を始めとする保育園の人全員に性的虐待されたとどんどん話が膨らんでいき、子供を心配する親の圧力もあってか、物的証拠なしに全員逮捕され、しかも仮釈放も許されない。

驚いたのは、単に小児性愛による性的虐待だけでなく、悪魔的儀式が行われたって話を子供が言い出し、それを真に受ける大人が多いってこと。なんかコレ、Qアノンの「ヒラリー・クリントンが子供を性的儀式に使ってる」に似てません?アメリカ人、というかクリスチャン?って本当にそれ信じているんだなあ。

この映画ではマクマーティン一家は普通に子供好きが高じて保育園を経営していたけど、国際児童研究所のキー・マクファーレンって女性の方が歪んだものの見方をしているように描かれている。子供とコミュニケーションするのに性器の着いている人形を使ったり、それを教育って言っているんだけど、この女性がすることの方がよっぽどトラウマだよ、的な?

あと、「子供は純真だから、子供の言うことは正しい」みたいな風潮。今では、子供は嘘を付くというか、相手を喜ばせようと誘導尋問に乗りやすいから、子供の意見は検証してみないとってなってるって思うんだけど、この映画では全部鵜呑みになってる。

これは今のMe, too ムーブメントをちょっと彷彿とさせた。「被害者層」、子供とか女性とか、「声を聴いて貰えない」層が声を上げることは「勇気をもった告発」だから「疑う人は人でなし」みたいな。

それで告発された人は釈明もできず社会的信用を失う。この映画では逮捕までされちゃう。

7年に及ぶ裁判で無罪が証明されても、「もう一度訴える」というPTAみたいな親の会の人たちが狂ってるなと思った。確かに、保育園などでの幼児虐待って存在すると思うし、子供が心配なのは解るけど、この人たちを執拗に訴えたからってそれがなくなるわけではない。そんなことしている間に自分の子供が通っている保育園の人たちを良く観察して問題ないかそっちに気を配った方が良くないか?まあ、こういう「活動」が好きな人は「社会正義」を貫くのが好きなだけだからな〜。

根も葉もない噂が膨らんで、何もしていなくても社会的に葬られるってことはあるんだな〜とゾッとしました。
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