りっく

新宿スワンのりっくのレビュー・感想・評価

新宿スワン(2015年製作の映画)
2.0
園子温の新作が今年5本公開される。ファンには嬉しいことだが、その皮切りとなる本作を観る限り不安でならない。中途半端で生ぬるいエロとバイオレンスと、薄っぺらいキャラクター。エクストリームな映画的興奮が味わえる園印はどこにも見当たらず、やっつけ仕事にしか見えない。敵対するグループの陣取り合戦という構図は「BAD FILM」「TOKYO TRIBE」と同様だが、そこにワクワクが感じられない。

本作の主軸である幼馴染である主人公と宿敵とのエピソードも、過去のある出来事があまりにも薄っぺらいため、全く感情が揺さぶられない。思わせぶりな山田孝之の演技も、その後のキャラクターのあまりの器の小ささに拍子抜け。

もう一軸の沢尻エリカと主人公のエピソードも酷い。童話になぞらえて沢尻から天使性や無垢っぷりを引き出そうとするが、そもそもミスキャスト。エロスを引き出す天才の手にかかっても、真野絵里奈と沢尻エリカでは雲泥の差が感じられた。

それぞれ新宿の歌舞伎町で辛いことを経験し、それでも各々歌舞伎町で生き抜く決意をする。だが、そこにはドラマもカタルシスも説得力もない。あの三池監督が今や牙を抜かれ「土竜の唄」といった生ぬるいエンターテインメントを撮っている。それに近い落胆を本作で感じてしまった。
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