幕のリア

瘋癲老人日記の幕のリアのレビュー・感想・評価

瘋癲老人日記(1962年製作の映画)
4.9
瘋癲?なんて読むのだ?
かんしゃく、癇癪、違う。
てんかん、癲癇、違う。
あつかん、熱燗、んな訳ない。

チケット売り場で、
「大映の次の回のヤツ一枚」
「ふうてん老人日記ですね」
ふうてん、フーテン?
調べてみると、無職という意味の他に、精神疾患なんて意味もあるんだと。

映画史に残るベストシャワーシーンは「サイコ」だと思っていたが、比肩するかというインパクト。
ノーマン・ベイツの刃より鋭い口撃と足蹴のしつこい応酬には腸捻転寸前で最高。

谷崎作品をまともに読んだことはないが、こんなコメディタッチで有ろう筈はない。
軽快なリズムやテンポにいつまでも見ていられる楽しさ。
日に日にエスカレートする筈の行為が、ネッキング(ネックハンギングツリーに非ず)と空中キッス止まりのお預けに嗚呼無情。
そんなプレイ代がcat's-eyeなんて非道い。
老人の一向に満たされない性欲がとっくに止まっていてもおかしくないハートビートを促す愚かさよ。

墓場探しの旅となる京都編が一転麗しやと思わせておいて、仏足石まがい朱墨版採りのハンドリングシーンの長さにウンザリ。
発声可能上映なら"もうええわ!"と声が飛ぶに違いない。

先日見た、本作より僅か3年前の作品では、颯爽としたナイスミドルを演じていた山村聰が醜いドM老人の赤ちゃん返りまでをも熱演。
若尾文子のイケズなヒールぶりには誰もがいぢめられたいと願う事だろう。

2018劇場鑑賞39本目
幕のリア

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