サマセット7

戦慄怪奇ファイル コワすぎ! FILE-02 震える幽霊のサマセット7のレビュー・感想・評価

3.6
オリジナルビデオ「戦慄怪奇ファイルコワすぎ!」シリーズ第2弾。
監督は「ノロイ」「貞子vs伽倻子」の白石晃士。
主演はシリーズ通じて大迫茂生と久保山智夏。

映像制作会社に再び投稿動画が送られてくる。
今回の動画は、廃墟で撮られた、女性のような震える影。
ディレクター工藤(大迫)、アシスタント市川美穂(久保山)、カメラマン田代正嗣(白石監督自身)の3名は、早速投稿者の若者3名と共に問題の廃墟を訪れ、不可思議な体験をするが…。

いわゆるフェイク・ドキュメンタリー形式で作られた、オリジナルビデオ・ホラーシリーズ第2弾。
当初は1作目とセットで今作が発表された。
発表当時はさほどでもなかったが、シリーズを重ねるごとに評判を高め、今では白石監督の代表作と言われるシリーズの初期作品。

前作と並べるとより鮮明になるが、このシリーズの魅力は、どうやら、よくあるジャンルものと思わせておいて、異なるジャンルに移行するというストーリーのひねりと、実録風モキュメンタリーには珍しく、チームものとして撮影スタッフのキャラクターが深められている点の2つにあるようだ。

前作は、口裂け女という都市伝説ものと思わせておいて、ガダラの豚的な土俗ホラーに移行していった。
今作でも、廃墟の幽霊という、定番中の定番、お化け屋敷風心霊ホラーと見せかけて、後半、思ってもいないジャンル間の飛躍をみせる。
ストーリーは予測不能で、そこが大変面白い。

前作で印象的だった工藤ディレクターの暴走ぶりは今作でも際立っている。
どう考えても、幽霊や都市伝説よりコイツの方がやばい。
今作でも粗暴な活躍?をみせる他、前作で登場したヤバいアイテムを嬉々として使用してみせるあたり、笑うしかない。
アシスタントの市川はどう考えてもこの会社を早急に辞めた方がいいが、上司のパワハラや暴言にめげずに取材を進める姿は健気である。

シリアスな笑いの威力はさらに増しており、特に終盤の展開には、空いた口が塞がらない。

なるほど、このシリーズは面白い。
オリジナルビデオ作品を劇場映画と同じ土俵で評価するのは不可能だろうが、キャラクターのその後を見たい気持ち、ストーリーが予測不能であることの期待感、クセになるシリアスな笑いと、シリーズを追いかけさせる魅力に満ちている。

今作単作でテーマを語るのは困難だろう。
あえて真面目に言うなら、日常に地続きで、異界はすぐそばにある、ということか。
もちろん、前作に引き続き、低予算でもアイデアと工夫でいくらでも面白い作品は作れる、という点も、作品そのものも、作中のキャラクターの奮闘も込みで、重要なテーマだろう。

ホラーが苦手な人にもオススメできる。
怖いと言うより、奇っ怪。
そして、シュールな笑いが楽しめる。

ジャンルを横断するフェイクドキュメンタリー・ホラーシリーズの、続きが気になる第2弾。
終盤の歩道橋での映像のやり過ぎ感がとにかくツボだった。