このレビューはネタバレを含みます
オリヴィエ・アサイヤスの名前はどこで知ったか、思い出してみると、粉川哲夫が『無縁のメディア』で、この監督の『カルロス』について語っているのを読んだのが最初だった。『カルロス』は何時間もある大作で、見る機会がなかったので、先にこっちを。
映画は各パートをフェード・インとフェード・アウトで繋いでいて、女優たちはオフの時に何をやってるかが、闇から浮かんでくるような作りになっている。フィルムで撮ってるらしく、照明や画面設計などどの場面も決まってて見応えがあるし、スムーズに撮ってて、見てて疲れない。観終わって気分がよくなるし面白い映画は久しぶりだったな。
原題は「Clouds of Sils Maria」で劇中に登場する『マローヤの蛇』という気象現象を指していると思う。この気象現象は劇中に出てくる舞台劇のタイトルにもなっている。
物語は、この『マローヤの蛇』の作者のヴィルヘレムの代わりに、授賞式に出席しようとしているマリアとヴァレンティンにヴィルヘレムの訃報が伝わるところから始まる。それをきっかけに『マローヤの蛇』を再び舞台で演じることになる一連の出来事を描いている。
この舞台が媒介になって、登場人物たちも影響されて、自分の気持を吐きだしたり、心理が変わったり別の一面を見せていく。それがおもしろいし、全員がさっき書いたオフな状態の演技がうまくて見応えがあった。
とくにクリステン・スチュアートが役柄にもマッチしててよかった。仕事や恋人に疲れてる感じがよかった。『スノーホワイト』の監督と不倫したり、『トワイライト』シリーズで、なぜかそれまでの演技力がガタ落ちしたと言われてたけど、これだと役を物にしてて、神経質な感じや若者っぽく早口で喋ったり、見ててすごくいいと感じた。セザール賞を撮ったらしいし、アサイヤス監督の次回作にも出るらしくて、気に入ったらしい。
クロエ・モレッツは、劇中のハリウッド映画の印象が強すぎてそれしか頭に残ってない。どう見ても酷い出来だったので、バカにし過ぎじゃねえかな。
ジュリエット・ビノシュはゴジラ(2014)で初めて見たはずだけど、全然覚えてない。この映画だと、モデル姿もカッコいいし、裸で湖を泳ぐときに紐パンだったり、といろいろ出来るなぁと思った。
やたらアイパッドや携帯を使う場面が多くて、あれを見てると、同じ部屋にいるけど、それぞれ個人的なことをやってるのが面白かった。もう個人の場所とかそこらかしこに出来るもんなんだな。