このレビューはネタバレを含みます
原作を読んだ後に映画があることを知り、こんな話をどうやって映画にするんだろうと疑問に思ったことを当時からだいぶ経った今でも覚えている。結論、原作の雰囲気そのままに三島らしい人間の美しさと醜さの両極端を実に良く表現しているように思う。
一方で少々物足りなさを感じたのも事実だ。特に児玉助手の役回りが中途半端。原作を読んだときはもっと麗子にもその恋人にも影響を及ぼしていたような感じがしていたが気のせいだろうか。彼女がいてもいなくても物語の展開からすればあまり変わらないような印象を受けてしまった。それに麗子の嘘を並べた日記。あの日記も物語の展開を加速させるうえでもっと重要な立ち位置だったような感じがするのだが、これもまた気のせいだろうか。
こうして考えてみると原作が名文学であればあるほど映画にするのは難しくなるのだと改めて感じる。本作がその典型だろう。いずれにしてももう一度原作を読んでみる必要がありそうだ。