ヨシイコウタ

パンとスープとネコ日和のヨシイコウタのレビュー・感想・評価

パンとスープとネコ日和(2013年製作の映画)
4.0
この前バイトしてるときにTVドラマのコーナーにこれを見つけ、それがちょうど原作を読み終わった頃だったので「運命だ」と思い借りてみました。

最近観た「オン・ザ・ロード」は映画化してしっちゃかめっちゃかになってましたが、こっちはとてもこだわって作られているなあという感じがしました。というか小説は小説で、映画は映画でそれぞれ良いなあという感じ。原作が好きな方も、これは気に入るんじゃないかなと思います。

食べ物をテーマのひとつに挙げている以上、なるべく食べ物は美味しそうに描かれていて欲しいものですが、その点については心配ご無用。丁寧でありながらも肩肘張らないシンプルなお料理は、家庭的で優しい味を観る側に想起させてくれます。作っている風景も、まるで自分の家の台所で母親が料理しているのを見ているかのような、不思議な安心感に満ちています。

そしてキャラクターにあてるキャストがぴったり合っていたことも、特筆すべき点です。小林聡美さんの、リアルで、役が生きていることを感じさせる演技・表現はほんとうに素晴らしい。
もたいまさこさんは「かもめ食堂」とはキャラクターが違いましたが、すごくしっくりきました。ちょっとトゲのある言葉の中にもちゃんと優しさが見えて、こういう人ってあんまりいないよなあと羨ましく思いました。挨拶しても顔すら向けてくれない大人がたくさんいる冷たい世界から見ると、彼女は柔らかく灯るランプのような存在に見えました。
しまちゃんは「ウィーンガシャンガシャン」みたいな歩き方がとてもチャーミング。思い描いてた人とそっくりで、びっくりしてしまいました。
他のキャラクターについてももっと書きたいですが、キリがないのでやめておきます。みんなとても暖かくて、優しくて、居心地が良い存在でした。

ストーリーの中には原作にはなかった、あるいは変えているシーンがいくつかありますが、それはそれで良い雰囲気になっていて面白かったです。疲れたときに、体にしみる作品だと思います。

お寺に最近来た新顔の猫はどんな猫なのか、顔が見てみたいところです。