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バクマン。のしゃにむのレビュー・感想・評価

バクマン。(2015年製作の映画)
4.7
「友情、努力、勝利…編集者のオレが、寒いよね。でもね、ちょっと信じてみたいんだ」

グレートですよ、こいつはァ…

少年の頃の気持ちは失くしたわけでも無くなったわけでもありません。ちゃーんと胸の奥に仕舞ってあるんだと気づかされました。

かつて「少年」だった者たちに、今まさに「少年」である者たちに捧げる王道青春エンターテイメント。胸アツ…胸アツ…胸アツ!

とりあえず売れてるマンガを実写化しときゃOKっしょ的な邦画の風潮に辟易していたぼくの目をガツンと覚ましてくれた胸アツな一本でした。あまり邦画は観ない自分ですが、最近の邦画でこうも熱くなれる作品はそうそう無いのでは?と思います。

まぁ考えてみたら熱くなるのも当然。原作は少年ジャンプのマンガですからね。それにぼくだって「元」少年ですから。

最近のマンガはからきし無知でジョジョくらいしか読まない自分の数少ない愛読マンガの中に「バクマン。」があります。主人公2人は悪魔の実を食べたデタラメ人間でも、精神力で人を殴れるマッチョの血統でも、肛門から悪魔を召喚出来る下痢ピーサラリーマンでもない、純粋にマンガが好きな平凡な少年たちです。特殊能力保持者量産工場「少年ジャンプ」にしては珍しいタイプの主人公です。比較的平凡で共感を覚えやすくていい。邪道で王道に立ち向かう姿勢が堪らなく好き。

原作は全20巻。映画一本120分弱にコンパクトにまとめるには多少設定を削らざるを得ないのが残念(巨乳のカヤちゃん、巨乳のry)です。原作自体テンポの良いマンガだったので今作は原作を疑似体験出来ます。言うなれば、読み切りマンガのようなものでしょうか。最短で最高のクオリティを。起承転結の最低限の骨格に原作の「旨味」が絶妙な分量で盛り付けられています。原作未読の方にもバクマン。の魅力を存分に味わえると思います。また原作ファン(ぼく個人の意見ですが)には原作・マンガ全てへの愛情を感じる嬉しい出来映えだと思いました。グッド!


「いいじゃん、バクチで」

勉強、部活、恋愛、どれに対してもマジになったことがないサイコーとシュージンがタッグを組み、マンガの王道・少年ジャンプでマンガ家を目指す。テンポの良さを優先して詳しい背景は語られませんが、原作ではサイコーはマンガ家だったおじの影響で、シュージンは家族への反発からマンガ家を志します。

「ゆ、夢が叶ったら、ぼくと結婚してください!!」

サイコーはサイコーにロマンチストです。同級生で声優志望の黒髪ぱっつんの美少女・亜豆にささやかな恋心を抱いていました。ひょんなことから、シュージンとタッグでマンガ家になることを、マンガがアニメ化したらヒロインを亜豆に演じてほしいことを、さらには夢が叶ったら結婚してほしいというプロポーズを亜豆の前で勢いで言ってしまいます。

「ずっと待ってるから…」

亜豆もロマンチストです。見方によればバクマン。は地球上でこの上(宇宙に行けますな)ない、遠回りで、もどかしい一途なストレートなラブストーリーです。「夢中」真っ只中の夢追い人たちが、銀河の彼方で輝くように、懸命に命を燃やす、清無限すら感じる清々しく若々しいエナジーが眩しくて、羨ましく、すごく触発してくれる作品です。


王道 VS 邪道

天才 VS 凡才

という構図がいかにも少年ジャンプ。

少年ジャンプの三ヶ条が今作の根幹を成していると言えます。

「友情」
サイコーとシュージンの2人で1人の一心同体コンビが友情の体現。他のマンガ家との(手伝うヒマあるの笑)絆も厚(熱)い。みんなマンガが大好きな読者なのは同じです。

「努力」
勝負は何も正攻法だけじゃない。凡才だからこそ天才が気づけないあっと驚くルートを発明するのです。

「勝利」
全ての血をインクに注ぎ込め!というスタンスの入魂の執筆。悟空とフリーザ、承太郎とDIOのような、一進一退のマジのギリギリのせめぎ合い、毛先までも全身全霊をかけた死闘に挑む2人にトキメキます。異種格闘技戦だ。キャラクターだけじゃない、死に物狂いで闘っているのはマンガ家だって同じなんです。この時、観客は少年です。少年なんだ!って自分で自分に気づきました。

主人公2人はイメージ通り。三次元で二次元的存在になり得ました。

佐藤健は「これはオレのマンガなんだ、オレ以上にこのマンガを上手く描けるやつはいない!」と語るシーンがサイコーでサイコーでした。鬼気迫る演技…!

神木隆之介はあーシュージンが動いてるぞ!って感じです。サイコーの良き相棒、女房に徹しています。

染谷将太は天才的に天才でした。気味が悪いくらいエイジです。

「すぐに追いつくので、それまで連載を続けていてください」

「その頃にはジャンプで1位になってますケド」

自分の才能を1ミリも疑わないあっぱれな天才ぶりです。

映像化にあたって1番様変わりしたのは編集者の服部さんです。原作ではセクシーなタラコ唇が特徴的なナイスガイでしたが、映画ではナイスガイな山田孝之でした。2人と嬉しそうにはしゃぐ山田孝之にキュンキュンしっぱなしでした。

「マンガ家と編集者が対立したらマンガ家の味方になるのが真の編集者だ」

編集者もマンガ家も熱心なマンガの読者って根本では同じかな?


エンディングもマンガ愛に溢れた嬉しい演出があります。テーマ曲の新宝島は手塚治虫の「宝島」を意識してるのかなと思ったり。超えろと。いい曲ですね。

少年よ少年であれ。

青年よ少年であれ。

ディ・モールトな映画ですので是非劇場へ!(誰よりTY先生に観てほしい。仕事して!)
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