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雪華葬刺し
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『雪華葬刺し』に投稿された感想・評価

「この校正刷りを読み直しているとき、私はテレビで、タイトルは分からないが、刺青の彫物師の物語を描くあの日本映画を見た」(p.166 ☆1)

そういったのは、かの哲学者ジャック・デリダであるが、金曜ロードショーと同じ感覚で本作をみていたなら、かなり面白い。

それはさておき、引用文が登場するのはデリダの『他者の単一言語使用』であり、具体的な映画が挙げられているのは本作だけだ。そしてデリダが「刺青」という単語を使用できたのはきっと本作のおかげである(?)。

デリダは『他者の単一言語使用』で始終、アルジェリアのユダヤ人として生まれたがためにフランス市民として自己同一化できないこと、そしてそれでも他者の言語≒フランス語を使用するしかない苦悩を語っている。冒頭で「私は一つしか言語を持っておらず、それは私のものではない」(p.11)という記述があるが、問題として語られるのはまさにこのことである。
では刺青はどういう文脈で語られるのかと言えば、例えば以下の通りである。

「伝統からの切断、根こそぎ状態、諸々の物語の近寄りがたさ、記憶喪失、解読不可能性等々――こうしたすべてが、系譜学的欲動を、特有言語の欲望を、アナムネーシスへの衝迫に満ちた運動を、つまりは禁令を破壊する愛を猛り狂わせるのである。それこそが、先ほど私が刺青と呼んでいたものであり、身体のうえに直に、それはあらゆる色彩を見せている」(p.134)

確実に言えることは、意味が分からなすぎて笑えてくるということである。けれど「刺青」という単語でよくこんなことが言えるなとは思う。そして本作は決してデリダの悩みとは関係ないということも。

だが、引用文は何だか本作のことを言っているようにも思えてくる。つまり本作は「禁令を破壊する愛を猛り狂わせる」物語であり、なぜ善良な茜が背中に刺青を彫るのかと言えば、愛する男である藤江田の「近寄りがたい物語」に接近するためだ。

以下、ネタバレを含みます。

第一の運動。

物語は、茜が京都にいる伝説の刺青師・彫経を尋ね、背中に刺青を彫ることを依頼して始まる。なぜ彼女が刺青を彫るのかと言えば、愛する藤江田の頼みだからである。彼は変態嗜好の持ち主で、背中に刺青を彫っている女性しか愛せない。このように一般的に語っているが、おそらくバーを営んでおり、性愛関係を持ち続けている春菜を念頭においているのだろう。

藤江田と茜の年齢差、職業の地位の違いなどから、藤江田の頼みはかなり気持ち悪いと思ってしまうのだが、茜はなぜだか受け入れる。このことについて単なるジェンダー表象の古臭さといっても間違いではないと思う。けれどデリダの言葉を借りれば、茜は藤江田の「刺青を彫った女性しか愛さない」という物語に接近しようとしているのだ。それは彫経に依頼した際に、彼女が春菜を念頭に置いて何度も「負けたくない」ということからも観取できる。
茜は藤江田の物語の中にいる愛する女性=春奈からその座を奪還して、愛する女性になろうとしている。その欲望に駆られている。それは茜にとって、美しい白い肌を失う大きな代償が伴っている。けれどその代償と痛みを受け入れても、近づきたい物語なのである。それを「禁令を破壊する愛」と言わずに何というのだろう。

茜は彫経に刺青を彫ってもらうことを懇願し、彼は受け入れる。しかし彼の彫り方も異常だと言わざるを得ない。なぜなら彼は茜に弟子の春経とセックスをさせながら刺青を彫るからだ。それは刺青の痛みをセックスの快楽で打ち消すという正当で異常な理由からなのだが、茜の背中の刺青はどんどん完成していく。

茜は愛する男の藤江田のために刺青を彫っている。しかし彼女は刺青を彫っている最中、春経ーデリダに言わせれば「天使」ーとセックスをする。これは言わば愛の「禁令」であり、ここから茜と藤江田と春経の三角関係が展開されると思っていた。だが本作は藤江田の物語を放擲して、急展開を迎える。彫経の家族の話になっていくのである。

第二の運動。

本作の前提に立ち返れば、茜が彫経を尋ねることができたのは実は藤江田の伝手であり、その伝手とは背中に刺青がある春菜だ。春菜には息子がいて、今は行方知らず。そして春経はある日、彫経の家を裸一貫で尋ね、刺青師になることを懇願している。彫経、春菜、春経…。そう物語で明らかになるのだが、この3人は家族であり、春菜は彫経に捨てられた女性、彫経と春経は親子関係なのである。

そのように考えると、彫経が茜の背中に刺青を彫る際に、春経にセックスをさせるのは一段と異常な出来事に思えてくる。しかしここで新たな物語が生起していく。それは春経が彫経の「近寄りがたい物語」に接近していくということである。

彫経と春奈が別れたのは、彫経が春菜の背中にセックスしながら刺青を彫ったからなのだが、その時に身籠もったのが春経でもある。この出来事もかなり異常であるが、そういった事情があるから春経は父が誰なのか知らなかったし、刺青が宿命的に刻印されている。このことは春経が(家族の)「伝統からの切断」、「記憶喪失、解読不可能性」の状態に置かれているということでもあろう。だからこそ春経は不在の父を探し、(家族という)「系譜学的欲望」に駆り立てられているのである。

それならば、彫経が実の父であると知ってしまった時の春経の絶望は計り知れないだろう。春経が知ってしまうのも、彼が大事に持っていた雪華の本を彫経も持っていたからだ。それは彼が引き継いでいるかすかな伝統の徴候であり、その本の雪華を茜の脇に彫った経緯もある。
彫経は父親なのに息子である自分を茜と、しかも目の前でセックスさせた。さらに母の嫌がった行為を繰り返し、自分自身も加担させた。そして雪華を彫ったときに自分が息子だと気づいていたのに、黙っていた。それは彫経が自身を「親子の物語」から拒絶したと理解してもおかしくない。

彫経が春経を「親子の物語」から引き剥がしたことは事実であろう。しかし代わりに刺青師の師匠と弟子として新たな伝統を、物語を紡ごうとしていたことも事実である。ただその刺青が、宿命的に春菜の痛みを引き継いでいることから無条件の幸福には帰結しないし、春経が自死し、彫経が後を追うように亡くなってしまったのだから悲劇としかいいようがない。

茜が藤江田に向ける「禁令を破壊する愛」から、春経が彫経に向ける親子愛へと物語は展開していった。そして本作の悲劇性を考えるに、春経の愛の方が猛り狂っていたと言わざるを得ない。

残されたのは雪華が刻印された茜と血縁関係のない勝子のみ。勝子の存在は、血縁関係がなくとも家族の伝統を引き継げることを示唆しているように思えるし、茜もまた刺青によって親子の悲劇を刻印し、語り継ぐ運命を担ってしまっている。

そんなことを文字として刻印した私もまた、彼らの伝統を語り継いでしまったようにも思えるが、彫経と春経に対する「葬」になっているなら本望ではある。

☆1 ジャック・デリダ(1996):“Le Monolinguisme de l'autre : ou la prothèse d'origine,Galilée(守中高明 訳(2024))『他者の単一言語使用ーあるいは起源の補綴(プロテーゼ)ー』岩波書店

蛇足
彫経は茜の背中に刺青を彫っている最中、茜が痛みに耐えかねて悶えると「春経!」と名前を呼び、セックスの快楽を与えるように命じる。この命令は頻度が過剰だし、それだけ茜に苦痛があるのは分かるが、正直笑えてしまう。しかしデリダはこの命令について以下のように述べる。

「この呼びかけこそは一つの命令、すなわち、仕事の指示体ないし主体たる、苦しむ基底財たる、傑作の受苦たる若い女に、代償として息子がもっと大きな快感を与えるようにという命令なのである」(p.137)

なんかこんな大真面目に記述できるのはすごい。
刺青師の話、文芸エロス。
父子の因縁ドラマなどあるが付け合せ程度のもので、全体的に退屈。
高林陽一らしく映像は耽美ではある。
2.8
美しい。

主人公を演じる宇都宮雅代が美しい。
その肌か美しい。
淫靡な世界が美しい。

ただ…面白くはない。

宇都宮雅代は子供の頃『大岡越前』のドラマの再放送をよく観ていて、綺麗な人だなと思っていた。
なので彼女が引退前に脱いだ作品ということで興味はあったが、なかなか観る機会はなかった。
レンタルでもなかなか見かけることはなく、いっそ円盤を購入するかとまで思った作品。
その後、何とかレンタルて見つけて鑑賞したが、購入は思いとどまって正解だったと思う。

映画に芸術性を求めないわけではないが、やはり娯楽としての面白さがないと、私はなかなか評価し難い。
一回観れば充分。
忘れた頃にまた観たくなる時はあるかもしれないが。

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