arch

VHSテープを巻き戻せ!のarchのレビュー・感想・評価

VHSテープを巻き戻せ!(2013年製作の映画)
4.0
この映画が作られた当時も、そして現在は更に悪化しているだろうフィジカルの衰退。VHSコレクター達の映画愛、そしてメディア形態を選ぶ自由に熱く語られたドキュメンタリーだった。

ちゃんと観ると一人一人の意見が嵌合してない部分もあり、一括りには語りづらい部分もある。特に物理メディアでありながらも、VHSの直接的な衰退の原因となったDVDやブルーレイを敵視する人としない人のグラデーションがあり、今ではまた違った"色"になっていると思う。
未だにVHSでしか見れない作品があり、VHSがなくなることで消えていく作品がある。配信にある映画だけが「世界にある映画」という認識が無意識的に拡大する昨今で、配信側或いは配給側が「見られる映画」をコントロール出来るという部分への視座を通して、購買の自由(つまり、買ってしまえば所有出来る自由)について考察しているのも興味深い。今や金を払っていたとしても奪われる可能性があるのだから。

海賊版やなんやらでかなりグレーな時代の話なので、単にノスタルジックに回顧しているだけだと、そこは今の方が造り手にとっては改善されたはずなので、ちょっと違う気もするので注意が必要だが、ともかく、自分もアナログ至上主義的な人間なので、彼らの固執してタトゥー彫っちゃう気持ちは痛いほどに分かる。

また本作はVHSを見る側だけでなく、造り手側にも視座を向けていてそこも面白いところ。VHS登場により映画の研究がしやすくなった、素人がより参入しやすくなったという背景もあり、VHS時代だからこその映画クリエイターがいた(いる)ことも忘れないようにしたい。
デヴィッド・ネルソンの言葉、しかと受け止めます。
arch

arch