Pinch

CRASS:ゼア・イズ・ノー・オーソリティ・バット・ユアセルフのPinchのレビュー・感想・評価

3.8
この独自集団については、まず彼らの音楽にしっかり耳を傾けるべきだろう。"Reality Asylum"('79年シングル)における生命を賭した正面切ってのキリスト教批判、"Nagasaki Nightmare"('81年シングル)での被爆体験の生々しい音楽表現、"Penis Envy"('81年アルバム)における男性中心主義への徹底した告発などを聴けば、彼らの意図が音楽ではなく思想そのものであったことが分かる。少なくとも上述した作品の思想は本物で、彼らは本気だった。ロックの先鋭性を、頭と体の双方を等しく駆使して、生のままぶちまけた最初にして最後のパンクバンドだった。

西欧は長らく「個人」の在り方を問題としてきた。この映画のタイトル(『あなた自身以外の権力などない』)は、自立した個人の極北を示す。この点では、日本人である私たちにはいま一つピンと来ないだろう。(道理で日本語に訳されないわけだ!)だが、そんなことはどうでもよい。彼らの音楽は残っている。興味のある方は、まず聴くことをお勧めします。(歌詞をある程度理解する必要あり。)その後で観ると理解が深まる映画なんじゃないかな。
Pinch

Pinch