乙郎さん

マイ・ブラザー 哀しみの銃弾の乙郎さんのネタバレレビュー・内容・結末

3.5

このレビューはネタバレを含みます

 DVDで鑑賞。とてもよかった。宇多丸さんが『アルゴ』評で、「レアグルーヴかと思いきや現役バンドの新曲だった」という例えを用いていたが、その例えはこちらにこそ適切かもしれない。こういった、70年代風味のアクションを豪華なキャスティングで再現するという試みが成立したことにも感動するし、日本でもこういう企画が成立しづらい事実が悔しい。
 原題は「Blood ties」。血が縛るということ。血縁関係に縛られることもそうだし、己の中に確実に存在するアウトローの血によって過ちを繰り返してしまう様も描かれている。
 出演者が地味に豪華なんだけど、兄が恋人にするミラ・クニスと弟が恋人にするゾーイ・サルダナって少し印象が近くないかな。このあたりも正反対の道を選んだはずの兄弟の隠せない似た部分が現れていると思った。
 これは、僕自身も男2人の兄弟であり、片方のきょうだいがもうひとりのきょうだいに足りないものを見てとる感覚がよくわかる。とくにこの兄弟は、幼い時のある出来事がきっかけでふたりが別々の道に進んでしまったというきっかけがある。血が縛ると同時に、彼らは過去に縛られている。
 やはりこれはラストの表情で決める映画だ。ある人物の表情は、「血の縛り」そして「過去」をようやく解き放った表情であるかのように思える。
乙郎さん

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