ふき

スガラムルディの魔女のふきのレビュー・感想・評価

スガラムルディの魔女(2013年製作の映画)
3.0
ダメ男(人間)たちと、相対的にまともに見えるが実際はダメ女(魔女)たちが繰り出すブラック色強めの珍騒動を描いたスラップスティックゴシックホラーコメディ作品。

クエンティン・タランティーノ監督の『フロム・ダスク・ティル・ドーン』によく似た構成だが、感想は「残念」に落ち着いてしまった。
まず、「強盗が警察から逃げる」と「強盗と警察が魔女と出会って逃げる」と「“母”の登場」の繋ぎが無理矢理すぎる。魔女の村につく前後で別映画と言ってもいいほど内容が変わるし、“母”とのアクションが始まると、ゴシックホラー的な雰囲気が途端にハリウッド娯楽大作の低予算版になってしまう。これを「予測不能」とか「予想外」とか言えば聞こえはいいけど、私には「構成が壊れている」ように感じられた。
また第二幕の後半(魔女に捕まって縛られるところから、“母”との対決に至る辺り)が、お話として弾けそうで弾けてこないところに、いつの間にか恋愛モードになってるエヴァと、いつの間にか本気でそれに答えようとしているホセなど、の納得できない件が重なってくるので、クライマックスに向かって気持ちが高まっていけなかった。

結末も、私はあまり乗れなかった。強盗の男たちにはそれぞれ犯罪行為に及ぶほどの自己中心的なクズ人間なのに、そこに対する変化も反省も成長も描かれないままに、お話的には女権社会の神を引きずりおろして終わり、ってどうなんだ? しかも特にホセは、セクシーな美女をゲットしつつ「いいお父さん」に生まれ変わったような顔でハッピーエンドを向かえるし。
反省しないならしないで「息子は悪に堕ちちゃったしニューワイフは魔女だし、これからはみんなで強盗とか殺人とかして生きていくぜぇ~!」みたいな軽妙な結末に落としてくれれば、「ひっでえオチw」と笑って済んだのに。

ただ、決してつまらない作品ではない。
クロースアップすると女性卑下なのに客観視すれば男性卑下な会話や、いちいちシュールでブラックなギャグなど、ド派手なCGで盛り上げる以外の部分は編集のテンポもいいし、爆笑もポツポツある。
その悪ふざけのようなギャグが伏線になっている展開とか、「指輪」から浮かび上がる男と女の婚姻関係の呪い的な側面とか、興味深く見られる部分も多かった。
結末も、同監督の『刺さった男』のように、シリアスなお話を語ってきて結局誰も何も変わらないエンドに比べれば、全然楽しんだほうだとは思う。

そんな感じで、『刺さった男』と同じく「つまらない作品ではない……んだけどなあ」に落ち着いてしまってる感じ。
結末がもう少し満足感のあるものだったならなあ。
ふき

ふき