いち麦

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)のいち麦のレビュー・感想・評価

5.0
過去の栄光の亡霊に苦しめられる映画俳優の物語に、大衆娯楽と評される映画界がずっと抱き続けた舞台芸術へのコンプレックスと足掻きを見た。愛おしくなるような作品だ。滑る様なカメラワークと長回しの様に見えるシームレスなカット技は空間や時間を自由に飛び越えていく鳥の視点を思わせる。刺激的なドラムの即興も興奮を煽り止まぬ。着地点も実に映画らしくて鮮やか。
映画界の抱くコンプレックス感が下地に見えるからこそ、俳優たちのエネルギッシュな名演技や芸術性の高い映像表現・音響効果が纏う皮肉が堪らなく痛快なのだろう。何とも愛おしい。うん、やっぱり僕は映画が一番好きだ。
レイモンド・カーヴァーの短編『愛について語るときに我々の語ること』は昔読んでいたので舞台がよく分かった。村上春樹の読みやすい翻訳が出ているから読んでおくといいと思う。

@20世紀フォックス試写室
いち麦

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