OkadaMasakimi

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)のOkadaMasakimiのレビュー・感想・評価

4.3
観た感想は、間違いなく面白い。ただ面白いのだけどとても複雑な映画だと感じた。単なる皮肉だけでなく、映画界と演劇界、演者と大衆と批評家、視点が多様で一度には考えきれないし、解釈も様々だと思う。昨今の映画事情に何かメッセージを込めたことは確かだろうけど、これ自体、挫折、薬物、再起など、要素がいかにもなハリウッド映画なのも面白い。想像より王道で楽しめた。

1カット手法だが、繫ぎ目を分からないようにしているのではなく、確実にカットを割っていた。時間の経過、注目する人物を流れるように変えて、舞台を取り巻くドラマを多方面から魅せている。繋げた映像を「切ることで」群像劇を見せる、これが面白い。主人公はキートンじゃなくてブロードウェイの会場そのものなんじゃないか?
ドラムオンリーのサウンドも、映像と相まって躍動感がある。狭い通路での準備時間や、意地を見せていくキートンなど、心が高ぶるシーンでは音楽に合わせた移動があり、場面の展開を心地いい余白に昇華していて、なんとも言えない高揚感があった。こうした「転換」が魅力的な映像として成立していて、撮影賞も納得だなと思う。

キートンが始め舞台で得たかった成功は、きっとかつて得た成功より高尚なものだと思っていたはず。それに捕われていたことで色々なものが見えてくる。本質は血とアクションが大好きな大衆と変わりなく、自分が離れたかったものと得たかったものは同義だった。それを娘や共演者と関わることで感じ、批評家と対峙して自分の在り方が覚醒する。バードマンから脱却しようともがく過程で、超能力を含め様々な意味と伏線とメタファーが散りばめられており、それらを経てバードマンの抑圧から解放を感じたときの清々しさはとてもいいものだった。
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