次男

パロアルト・ストーリーの次男のレビュー・感想・評価

パロアルト・ストーリー(2013年製作の映画)
4.6
「私がすることにも、理由はないわ」

きっとそうなんだろう、きみたちの、あのときのぼくとかのすることに、ひとつも意味なんかないのは、いまこうしてここから見ると、よくわかる。なにひとつ意味なんてないし、意味も理由もないから、なにをしたらいいかわからなくて、酒を飲んだり、セックスをしたり、羽目を外してみたり、道を外してみたり、大声を出したり、歩いたり、走ったり、泣いたり、傷つけたり、傷つこうとしたり、好きになったり、なろうとしたり、するんだと、したんだと思う。

「もっと年をとったら」って前置いて感想を保留してきた映画が山のようにあるけど、10年よりもっと前からあるけど、10年経って、すっかり大人と分類されるいまでも、「わかったことなんて幾つもない」ということしか、わかってない。でもやっぱり、「もっと年をとったら」、少しずつ理由と折り合いを作っていって、いろんなものを分別して、そういえばそういうものが増えてきたかもしれない、なにかを諦めたり、決め付けたりすることに慣れてきたし、少なくともぼくはもうぼくのことを天才だとは思っていない。

それでも、この映画を観て、こんなに取り留めのない話に、釘付けになった。なんの話か手に取るようにわかった気がして、自分とは似ても似つかない男の子に自分を入れて、彼女にどうしようもなく恋してしまうくらいは、まだぼくはそこにおるんだと思う。まだおるのか。まだおるんやなあ。まだ手に取るようにわかることも、全くわからなくなっていくことも、どちらもだめな気がする。

ふたりの恋は漠然と 救いで、大事ななんかで、すがる思いで、ふたりが結ばれて散らかったものものが整頓されるのを、心待ちにしていた。そんな渇望したものにだって、理由があるのかないのかは、わからないけど。

わからないことだらけだ。当たり前だ。いつかわかるのかなって置いておいたものは、きっといつになってもわからない。時間が経つと、そのわからないことに名前をつけ出して、わかったことにするんだ。本当はなにもわからない。だから、要素を抜き出して、わかったふりして、この映画を分類するな。僕が信じてる宗教はこれぐらいだ。

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壊れそうなひとたちと、その表情。美しく切ない情景、エンドソング。この映画を手元に置いておこうと思う。深夜のメモは内容も句読点も我ながらよほど気持ち悪いし、読み返したら顔から火がでるだろうけど、この青臭い文章こそが、この映画がこたえたという証明に他ならないので、これも手元に置いておこうと思う。
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