NAOKI

きみはいい子のNAOKIのレビュー・感想・評価

きみはいい子(2014年製作の映画)
3.8
あれは…おれがもう、子供ではない社会人になったばかりの頃…

なにもかもが上手くいかなくなった時期があった…
仕事も上手くいかない…プライベートも彼女にフラれたり友達とケンカしたり…家族ともいさかいが絶えず、歯車が完全に狂ってしまった毎日…

「あぁ!しまった!」
住宅街を歩いていたおれはあることを思い出して飛び上がった…大事な書類を会社の机に置いたまま出てきてしまった!今日中に顧客に届けないとまずいことになる…

もう間に合わないのは分かってたが「とにかく戻ろう」歩道で反転して走り出した途端、足をもつれさせて盛大に転ぶ!
肘をひどく擦りむいて血がみるみる滲んでくる💦
「くそ!くそ!くそ!」

おれは歩道に寝転がったまま頭をかきむしり、寝たまま舗道の側石を蹴り始めた。
「くそ!くそ!」

通りがかった人はさぞ怖かっただろう…だって大の大人が歩道で寝たまま泣きわめいているのだから…
おれはもう自暴自棄になって「どうにでもなれ」の心境…

そのとき…誰かの手がおれの頭を触った…
よしよしするみたいな触り方におれはぎょっとして頭を上げた。

ひとりの子供がおれに手を伸ばしていた。
ほほえみを浮かべるその顔にはあの独特な表情が…
すぐにダウン症の子供だとわかった。

「みんないい子」
俳優陣…みんな素晴らしいんだけど…
高良健吾がすばらしい!

彼が演じる小学校の新任教師…皆さんはどう思ったでしょうか?
ダメダメでイライラした?
おれなんかもし自分があの立場だったら彼ほどちゃんとやれるかな?つくづく大変な仕事だと思います💦教師をやってる人たち…本当に尊敬します。
おれならあんなクソガキ…体罰復活させてしまうかもしれません😁💦

「そこのみにて光輝く」の呉美保監督…
この世界でのささやかな人と人の係わり…
ほんとに上手いなぁ💦
高良健吾と虐待疑惑の教え子…
池脇千鶴と尾野真千子…
認知のおばあちゃんと自閉症の男の子…

この映画は愛とか人を抱きしめることとか…もちろん描いてはいるけども…おれはこの映画のテーマは「気づき」ではないかと思った…

高良健吾は気づいてはいるが気づいてないふり…
最後にあの子がいつも鉄棒のところにいたのは「あれ」を見るためだったのかと気づく!

池脇千鶴は尾野真千子の闇に気づいてたんだ!

おばあちゃんも自閉症の子も気づいてた!

高良健吾とならぶ天才をここでも発見!自閉症の子を演じた加部亜門…「レインマン」のダスティン・ホフマンとか「ギルバート・グレイプ」のディカプリオを越えてるじゃないか?💦すごい!

さぁ、あなたは気づくことが出来るか?
気づいたとき行動することが出来るか?
そしてラスト…
この映画は終わらない…今も続いている…
あなたの「気づき」を待っている子供や大人がいるかもしれない💦
そんな感じ…

そのダウン症の男の子は歩道で転んだおれの頭を撫で撫でしながら…
「大丈夫…大丈夫」
と言ったんだ💦

おれは思わずその子の手を握りしめると号泣したのでした。王蟲の子の触手を握って「優しい子!」って泣くナウシカみたいに…
しばらく泣いた後、いい大人がさすがにみっともないと思い、立ち上がるとその子に「ありがとうね」と言ってその場を走り去った。

幸い…そのあと仕事も好転し、自分のプライベートも立て直して生活に落ち着きが戻った。
おれはあのときの男の子にもう一度会ってお礼がしたくて、あの転んだ場所の周辺で聞き込んだりしたけど結局どこの子かわからず仕舞いだった。

本当の天使だったのかもしれない…
あの子はおれを撫で撫でしながらこう言ってくれたんだ…

「大丈夫…大丈夫」
NAOKI

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