うるぐす

ザ・ウォークのうるぐすのレビュー・感想・評価

ザ・ウォーク(2015年製作の映画)
4.6
芸術は爆発
この有名な言葉は岡本太郎のものだが、この映画はそのもの。

あらすじを究極にまとめると、「主人公が世界一高いビル “であった” ワールドトレードセンターの二棟にワイヤーを引っ掛けて綱渡りを実行する。」って感じでしょうか。
ただし、このあらすじだけで判断して「なら、観なくてもいいか」というのはもったいない。これは観るべき映画の一つです。そして、映画館で、3Dで観るべき映画なのです。

綱渡りから想像するのは、サーカスであり大道芸。だけど、主人公は自らをアーティストだとする。つまり、芸術家。この主人公を芸術家たらしめる一番の要因は「爆発的な衝動」。これ。この衝動ってやつがほんとに無茶苦茶なんだけど。何の為にそんな高いところで綱渡りをするか?ーそれが彼の夢だから。 もうしょうがないんですよ。「やりたい」が理由になってしまうともうそれ以上は止めることもできない。だから、彼の恋人や仲間は共犯者にならざるを得ない。そして、彼が綱渡りを実行し、それを見る我々ー映画の観客ーさえもが共犯者となってしまう。映画館が緊張感に包まれて一体感が生まれる。みんな3D眼鏡をかけて自分の世界に入っているはずが隣の他者の体温を感じてしまう。この不可思議な体験。これこそ映画鑑賞の醍醐味。
そして、それだけにとどまらず一番最後に「forever」というフレーズで「あの悲惨な大事件」についてちゃんと届けるべきメッセージを送る。
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