ゴエフト

くちびるに歌をのゴエフトのレビュー・感想・評価

くちびるに歌を(2015年製作の映画)
4.7
言葉にするととても陳腐なんだけど、でも言わないといけない。
めちゃくちゃ良かった!

長崎は五島列島の美しい景色と謎多き美しい先生。それだけで視覚的にはもうかなり満足してしまったのだけれども、それに決してテンポが良いとはいえないスローな物語運びがなんとも焦れったくて良かった。

弾かないんじゃなくて、弾けなくなってしまったピアノ。
柏木先生は何か自分を変えるきっかけが欲しくて地元に一時帰省したのだろう。
何度も弾こうとして、でも弾けなかったピアノを、ホントのホントにようやく船の汽笛の音であり前進を意味する「ド」を鳴らしてからの呪縛から解き放たれたかのような演奏にはもう涙するしかなかった。

自閉症の子の裏表の無い行動からくるピュアさや、15才という年齢ならではのひたむきさや心の不安定さも、柏木先生にとって魂の救済だったのだろう。

決してすべてがハッピーエンドにはならないリアルさと、無口であまり語らない柏木先生と生徒との余白を爽やかな長崎の空気感が駆け抜け、それはそれはもう充実した映画体験でした。

映画館で観たかった!
きっと号泣してたでしょう。
こんな素敵な作品にはそうそうめぐり会えるものではない。
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