純

ゴッド・ヘルプ・ザ・ガールの純のレビュー・感想・評価

4.0
レトロでしっとりしてて可愛い。ポップな音楽と華やかな色彩、脆い関係性。青春映画だなあ。作られたようで誰にでも当てはまりそうな、不思議なバランスの取れた作品だった。

拒食症のイヴが病院を抜け出し、音楽と仲間に囲まれた日々を過ごしたと思いきやまた逆戻りし、でも結局彼女が向かうのは…という話。これで物語終了ですよ〜!なんじゃなくて、この物語はまだまだ続いていくんですって感じの終わり方が良い。わたしたちの「今」だっていつかの「あの頃」の延長上にあるんだし、「あの頃」は終わっても消えたわけではないよね。自分が生きてる今も思い出になった過去も愛おしくなる映画だった。

ファッションもひとつひとつのショットもお洒落に溢れてて、観てて最高に楽しかった。透き通る音楽とみずみずしい若さが浮き出てる。向こう見ずで弱くて儚い主人公たちの世界観が本当に素敵。(最近こんな映画ばっかり観てるな。)

どうしてもイヴが拒食症である点が見えづらいから、内容がないだとか脚本が未完成だとかマイナスに感じる人が多いんだろうけど、これは1種の成長物語だよね。1歩踏み出すために、なりたい自分になるためにどこへ行くのか。イヴの向かうべき場所はどこなのか。そう考えると、ポップな切り抜き絵本みたいな今作にもほろ苦い現実が見えるんじゃないかな。彼女に必要なのは「変化」で、髪色を変えたのも新しい人生に挑む意志の表れなんだと思う。これまでの自分や経験が今の自分を作ってくれたことは承知の上で、昔の自分とさよならしたんだね。

わたしは青春って「何であんなことで毎日笑ってたのか思い出せないけど、あの頃は楽しかったんだよなあ」みたいなもんだと思うから、この作品の絶妙な曖昧さが本当に好みだった。なんだか本当にわたしたちの映画だったな〜!サントラ素敵すぎるし毎日でも聴いときたい。悩んでるわたしたちを、神様はきっと助けてくれる。ゴッド・ヘルプ・ザ・ガール。
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