Foufou

自由が丘でのFoufouのレビュー・感想・評価

自由が丘で(2014年製作の映画)
4.0
なんとまた、おおらかな映画でしょう。

そして、外国人の使い方がうまい。

加瀬亮を外国人として観るという、なんとも不思議な感覚を味わえます。するとどうでしょう、いい役者だなぁ〜って、しみじみ思われてくるじゃありませんか。

設定では二年も韓国にいたことになってるんだから、ちっとも韓国語を話さないモリ=加瀬亮はちょっと不自然なんだけど、第三言語である英語でつながる韓国人と日本人を撮ることの意味が、ヒシヒシと伝わってくるのでもある。こういうのこそ、国際感覚というんじゃないかなぁ。

キム・ミニにはどうしても監督自身の思い入れがレンズから溢れてしまう。そうした極私的感情から離れたところで撮るもののほうが、この監督はいいんじゃないか。

吉田健一の『時間』にかこつけて、時系列が相前後する。時にそうした映像の修辞が分かりにくさを生むホン・サンスの映画だが、本作はなんともしっくりきます。なるほど、こういうことをやりたかったわけか、と。

ロケ地にこだわるようにみえて、相変わらず土地の魅力を撮り切らないホン・サンスの気質は、本作のタイトルによく現れているのかもしれない。ちなみに東京の自由が丘は3丁目までで、8丁目はない。ただし、福岡の宗像市には自由ヶ丘8丁目が存在する。

邦題は『自由が丘で』。

トイレに閉じ込められた加瀬亮の運命やいかに?

本作でも全員が全員タバコを吸いまくり(吸ってるタバコを話題にすらする!)、三度四度とサシで深酒する。男と女が際どい話をし始めるのは、ワインの白が一本空いて、二本目の赤が三分の二空いたあたりから。男同士が和合するとき、焼酎の空いた小瓶が六本机に並んでいる。

まったくもって、リアルじゃありませんか。

そしてこちらも観終わる頃には安ワインが一本空いて、幸福な気持ち。
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