ろどちぇふ

野火のろどちぇふのレビュー・感想・評価

野火(2014年製作の映画)
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小説の最後のクライマックスの部分とかあの文章とかをどうやって映像化するのだろうかという興味半分、忘れてはならない出来事として一度くらいは観ておくべきかという義務感半分で観ていた。

やはりあの小説の映像化は不可能だと思うし、落としどころにも正直納得はできない。確かに人間は狂気に陥るけれど、それすらも超えた境地にたどり着いたのがあの小説の凄まじさだし、主人公が狂気そのものや観念的な世界と対峙する部分がクライマックスだと感じた記憶がある。小説を読んだのは随分前だし(未だに読み返せていない…)、理解や解釈を僕が間違えている可能性もある。でも少なくとも、ただ悲惨な状況を描いただけでは足りないのは確実だと思う。

あれがほぼ現実としてあったのだということは人々に知らしめるべきだし、映画の最後で、決して消えない過去であることを示そうとしているとか、やりたいことはわかる。でも上記の理由で個人的には評価したくない。そもそも映像化されずとも大岡昇平の書いた『野火』は全人類読むべきである、という結論に至った。

市川崑版もあるとは知らなかった。誰がやるにせよ映像化すべきじゃないのでは…という疑念も消えないけど、見比べるほどの体力はない。観るとしても来年かな…。