りっく

カリートの道のりっくのレビュー・感想・評価

カリートの道(1993年製作の映画)
4.5
ロマンチックでセンチメンタルなギャング映画。絶対に手に入れることのできないパラダイスを追い求めて走り続ける男の喪失と、手を伸ばして掴みかけた楽園の美しい光景に咽び泣いてしまう。

アルパチーノ演じるカリートが撃たれ、担架で運ばれる姿を捉えたモノクロの俯瞰ショット。彼を見つめる1人の女。遠のいてゆく意識の中で壁の広告を見る。そして映画は時を遡っていく。

出所したかつての麻薬王は故郷の変わり果てた姿と失われた仁義を嘆き、この世界から足を洗い恋人との幸せな暮らしを夢見る。

だがそんな夢を過去が追いかけてくる。麻薬漬けの親友の犯罪に巻き込まれ、純粋さや真実の愛が手からこぼれ落ちていく。物語も映像も表面だけをなぞればベタで気恥ずかしくなるかもしれない。でもデパルマはその汚れなき真っ直ぐな夢の喪失を疑いなく見つめ続ける。

チェーンがかかったドアをぶち破り、鏡に映った裸体の恋人と時を経て結ばれる場面。或いは、駅のエスカレーターや電車での銃撃戦。流石デパルマという映像技巧の斬新さ含め、映画を観る喜びを再認識させられる傑作。
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