こたつむり

進撃の巨人 ATTACK ON TITAN END OF THE WORLDのこたつむりのレビュー・感想・評価

1.0
♪ あゝ 目覚めには遠く深い
  あゝ 此処は何処?僕誰なの?
  僕は突き抜ける

いやぁ、清々しいほどに何もない作品でした。
ここまで突き抜けているとは想定外。
日本四大××映画(××には好きな罵詈雑言を入れよう!)を遥かに凌駕していると思います。

何よりもスゴイのが。
誰も幸せになっていない…ということ。
観客や原作のファンは勿論のこと、監督さんも脚本家さんも出演者もスポンサー企業も…心に瑕を負い、懐は痛み、魂が口から抜けていくクオリティ。まさに世界は残酷ですな。

基本的なノリは日曜日朝の特撮ドラマ。
いや、それと比較するのは失礼かもしれません。何しろ、大ヒット御礼の『進撃の巨人』アニメ版の脚本を仕上げた小林靖子さんは特撮出身。彼女が手掛けた『シンケンジャー』なんて「え?これを幼児向けに放映したの?」と驚くレベルでしたから。

問題なのは演出でも脚本でもなく覚悟。
巨人が光ろうと叫ぼうと簡単に倒れようと些末な話。「全ては政府の陰謀なんだ」と安易な発想に飛びつく姿勢が問題なのです。

それを考えたら前編はまだマシ。
原作と違う部分を指摘して楽しむ余裕がありましたからね。そんなにオリジナルが良いのならば「異譚」とか「異聞録」とか付ければ良いじゃない、と対策を考えることも出来たのです。

でも、本作は圧倒的。
日本語で語っている筈なのに耳が拒否しますからね。気付けば襲いかかる睡魔。もしかしたら、巨人ではなく虚人なのではないか、と思うほどに向かう先は“がらんどう”でした。

もうね。
「本作は“虚無”を表現したかったんだ!」
と言われたら納得しますよ。というか、製作途中の関係者の精神状況を考えると…当たらずとも遠からずだったりして…。

まあ、そんなわけで。
劇場公開中は場外乱闘を含めて話題を振り撒いていましたが…今では砂塵に埋もれて土壌に帰るのを待つだけの作品。どんなに非難される存在でも、土になれば新しい花を咲かせることもありますからね。

そう思えば、最も悪手なのは中途半端な擁護。
排泄物を陳列したって誰の益にもなりません(学術的には何かしらの意味が発生しますけど)。きちんと成仏させてもらえた本作は…幸せなのかも。
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