イホウジン

ゴジラ キング・オブ・モンスターズのイホウジンのレビュー・感想・評価

3.7
良くも悪くもアメリカナイズされた対決系ゴジラ映画。

バトルシーンはさすがハリウッドだけあって見事である。怪獣たちが世界中で大暴れというシチュエーションは04年の「ファイナルウォーズ」でも見受けられたが、少なくともそれよりは遥かに進歩が見られる。それはCGの技術の向上もあるが、なにより主要4怪獣の設定が非常に丁寧である。それぞれの怪獣の長所を過去作から徹底的に分析した上で最大限にリアルな動きにしようという監督の丁寧な仕事ぶりが伺える。首を曲げてゴジラの光線をかわすキングギドラ、分厚い羽根でボテっとした動きをするラドン、極限まで蝶に近づいたモスラ、そして過去作からのリスペクトを受けたゴジラの七変化、日本のゴジラに劣らない素晴らしい出来栄えだったように思える。

ただ、あえて言うとストーリーはめちゃくちゃである。特に人間パートの非合理性はひどい。人がやたらと死ぬ割にそれに感傷するパートが少ないし、あまりにもいちいち都合が良すぎたりするのである。「神」に言及する姿勢は興味深かったが、そこら辺の探求も浅いままツッコミ所だけが増えてしまった印象だった。
また、ゴジラをアメリカナイズするにあたって、日本へのリスペクトという意味で疑問を感じざるをえなかった。特に、本来のゴジラの設定の背景である原爆,原水爆への言及に乏しかったりした点がそれである。正直ここら辺についての説明がないとゴジラの登場背景をうまく理解出来ないはずなのだが、それを省いていたのが残念である。あと、渡辺謙が演じた教授の発言や行動も微妙だった。ある意味日本の敗北宣言とも読み取れるセリフの連続で、教授のシーンの終わり方もある意味敗戦間際のアレを想起させるもので少し不快だった。
だとすると、今作は日本へのリスペクトと言うよりかゴジラへのリスペクトと考えた方がよいのだろう。
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