タキ

オデッセイのタキのレビュー・感想・評価

オデッセイ(2015年製作の映画)
4.1
オデッセイとは古代ギリシャの長編叙事詩オデュッセイアからきており長期の放浪、長い冒険(の旅)、遍歴という意味らしい。つまり内容はそのものズバリ、アクシデントでたったひとり火星に取り残された宇宙飛行士マーク・ワトニーが数々の困難を乗り越えて地球に帰ってくるまでの冒険物語。
火星探査のクルーはマークが死んだと思っており(実際大怪我をしたのだが)これからどんな凄惨な話になるかと思いきや、マークは自身で冷静に腹部の治療をし、食べ物がどれほど残されているか調べ、救助は(次の火星探査のこと)4年後だから足りない分はジャガイモを作り、水も精製するなど終始ポジティブシンキング。彼が唯一激昂したのが、NASAが自分の生存を同僚クルーに伏せていたことだけで、彼を置き去りにしたことについては当然の成り行きだったと理解しているし、もちろん誰のことも恨んでなどいないのだ。なんという人格者か。宇宙飛行士とはただ体力があって技術力や知識が豊富なだけではなれないと聞いたことがあるが、自分の行動や発言によっては仲間の命も危険に晒すこともあるわけだからこれぐらいの精神力を持ち合わせた人格者でないと務まらないのだろうなという気はする。
科学や物理の話はまるで理解出来なかったけれど、地球人の叡智を結集してなんとか彼を生還させる方法を探るくだりは胸アツだった。立場の違いで意見が多少は違うものの、そこには差別や国境すらも存在しない、まさに理想の地球と言っていい。荒唐無稽だと笑う人もいるかもしれないが、こうあってほしい未来を見るのも悪いことじゃない。
アルマゲドンのアメリカファーストぶりはどうにも鼻につくが、オデッセイは世界中の愛と科学技術がひとりの地球人を救うというなんとも平和で美しい映画なのだ。
そして女神さまのようなジェシカ・チャスティン(ルイス船長)に命がけでキャッチしてもらう特典付きで一緒に遭難したい人トップにマッツを抜いてマット・デイモンが躍り出たことを皆様にお伝えしたい。
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