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オデッセイのTAのレビュー・感想・評価

オデッセイ(2015年製作の映画)
4.6
   西暦2030年。探査中の事故によって死亡したと勘違いされ、火星に独り取り残されてしまった植物学者マーク・ワトニー(マット・デイモン)。
怪我の処置を終わらせ、一人呆然とビデオログの前に座った彼はカメラに向かって語り始める...


   生きてるよ~✼

   サプラーイズ  ♪





あっ...(・∀・;)


   ...何か前向きでほっとした☆

  
   本作が既にシリアス路線ではないことは知っていたものの、この辺りから作品の楽しみ方が方向付けられる。
鑑賞後は本作におけるテーマ「科学とユーモアは人類最大の武器である」ことについて、これは納得せざるを得ないと感服した次第です。
   『ゼロ・グラヴィティ』のように真に孤独からの帰還モノでもなく、『2001年~』『ソラリス』のように難解で神秘的な哲学に拠ることもなく、『月に囚われた男』のように道徳的な問いを投げかけたり『インターステラー』のような家族愛だったり『コンタクト』のような科学と宗教の関係を徹底してシリアスに描くことも無く、(強いて言うなら主人公に『月に囚われた男』のサム・ロックウェル的なお気楽さは感じられたが、アレはアルバイト感覚で月に来てた訳だし)宇宙での過酷なサバイバルを「科学」と「ユーモア」と「音楽」「チームワーク」を駆使して感情豊かに描いた本作は他のどの作品とも毛色の異なる、オリジナリティ溢れるスペース・ミュージカルだった♪
   ミュージカルと書いたのは、本作がゴールデングローブ賞においてコメディ/ミュージカル部門で作品賞と主演男優賞を受賞したことからだが、受賞の理由も納得で、流れる楽曲が全てそのシーンの登場人物の心情を説明する歌詞とメロディになっていたからだそうだ。
   私は全ての楽曲と歌詞を知っていたわけではなかったし、どうも版権の問題で字幕を付けられない箇所もあったらしいので、何度かサントラ聴いて歌詞読んで、公開期間中にはもう一度観に行きたいと思っています♪
   多くの人が挙げるように「スターマン」の流れるシーンは今思い出しても熱いものが込み上げて...あぁ、早くもう一度観たい。
   楽しい映画は楽しみ尽くさねば*

   科学の対抗軸たる宗教に対して直接的な台詞は無かったが、マークは他の乗組員が残していった十字架を見るや、それを削って燃焼物にしてしまう。十字架は祈るためだけのものでなく、燃やして火を熾す実用的な“道具”として使えるという辺りになかなか皮肉めいたものを感じたが、しかしそれも“生きる為に不必要なことはしない、必要なことだけをやる”というある種の合理的な思考に過剰ではない彼の自然な真面目さが感じられ、マークの好感の持てるキャラクター造形に一役買っていたように思う。
   そんなマークのキャラクターは底抜けに明るいわけではないが、子供のような憎めない無邪気さとストレートな毒気の正直さがあり、一見場違いとも思えるディスコミュージックとともに自然と物語の雰囲気を陽気に演出できていて、加えて知性溢れる笑いのセンスを備え、それはキャッチコピーのように70億人、世界中の人々が好きになれるスマートでユーモア溢れる魅力的な人物だった。これはマット・デイモンでなければ考えられないキャラクターだ。
   
   科学的な知見に基づいたとはいえ、凡人には付いていくことも必死な会話が多くあったが、本作は映画らしく難しい話は潔く画で見せるところが素敵だった*
   初めてマークが地球と交信して「“YES”!!」と叫ぶシーンとそこに至る地球での“気付き”と“行動”のシークエンスは正に本作における「科学とユーモア」の結晶によって最初に得られる大きなカタルシスがあった。
   そして本作はてっきり独りでの戦いかと思いきや、前述のとおり地球を巻き込んでのまさかのチーム映画だった!しかもヒーローが日替わりで次から次に現れ、科学的な知識をアクロバティックな発想に乗せて繰り出し、一つの壮大な救出プロジェクトが進む様は『アヴェンジャーズ』や『オーシャンズ11』のような、一種のアメコミヒーロー映画のような登場人物の一体感と興奮を湛えていた。
   科学的な思考の楽しさ、ユーモアであること、諦めないこと、人種や国境を越えて協力すること、仲間を信じ、決して見捨てないこと、子供たちが暗に受け取るメッセージとしてこれ程上質なものが他に有るだろうか。話はあまりにうまく行き過ぎてご都合主義かもしれない。それでも心から楽しめて、この映画を観て私たちの心の中で変わる何かがあるなら、それはきっと良い事に違いないと信用できる。
   映画の最後は、彼が大切なメッセージを次代に引き継ぐ姿と皆が笑顔を交わし合い新しい挑戦へと踏み出す姿で物語は終わる。嫌味なく、また説教臭くなく、それでいて説得力に満ちたこのような映画は近年見当たらない。

   また観に行きたいし、今も周囲に勧めまくっています*


余談①
   当初悪人顔ショーン・ビーンのキャスティングにとてつもない違和感を抱いていた。しかしマークを救出する為に開かれる秘密会議の通称名が“エルロンド会議”って、その為のあなただったのですね!(*´Д`*)いつ死亡フラグ立つのかと勘違いしてすいません(//∇//)

余談②
   本編とは関係ないが、隣に座ったカップルが上映中もイチャイチャしてぺちゃくちゃ喋りやがるどうしようもない奴らでイライラしていたけど、同じ所で笑うとそれだけで何故か一体感が生まれて大目に見てしまうのもコメディの持つ不思議な力である、と言っておこう。もし観てたのが『インターステラー』だったら奴らは今頃夜空のお星様になっていたことだろうよ(#^ω^)

余談③
   マット・デイモンの宇宙服のカラーとデザインがBB-8にしか見えなくて、あたふたしてる様が余計にコミカルに見えて仕方ありませんでした♪♪
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