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LOW DOWN ロウダウンのSPNminacoのレビュー・感想・評価

LOW DOWN ロウダウン(2014年製作の映画)
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ジャズ・ピアニストの父と不安定な生活を送る娘エル・ファニングの視点で、70年代ハリウッドの日陰に生きる負け犬たちを描いた映画。
スナックやスパゲッティ、エルが食欲旺盛に食べる場面が多い。お腹を空かせた子供は与えられたものを貪欲に吸収する。暴力やドラッグなどいかがわしい大人の世界を、窓や扉を隔てた向こう側、あくまで子供から覗く範囲でしか見せないが、音楽は壁を超え、大人にも子供にも届く。そしてひなびた部屋でのセッションが、この憂鬱を束の間晴らしてくれる。それもまたドラッグみたいなものだ。
けどとにかく、父とその界隈の大人たちは子供に優しい。自分も助けが要る弱者なのにより弱い側の者、他人の子でも守ろうと思いやる。ただ、ジャズもその優しさも世間では居場所がなく、またお互いに惨めな現状を肯定することにもなってしまう。少しずつ大人に近づいた娘は、自分で生緩く淀んだこの場所を抜け出すしかなかった。
呑んだくれの母、愛ゆえに厳しい祖母グレン・クローズ、秘密の部屋に住むピーター・ディンクレイジ、BFのケイレヴ・ランドリー・ジョーンズ(相変わらず病んでる!)、ミュージシャン仲間。そしてピアニストとしては一流、娘思いだが仮出所中でドラッグ依存、どん底暮らしから這い上がれない父。ミュージシャンとして父として息子として愛せるけど、一緒にいたらダメになる…ジョン・ホークスの弱々しい負け犬風情とピアノを弾く時の色気が、そんな男に相応しい説得力。見た目もちょっとチェット・ベイカーに似てるし。
てか、実話だと最後に知った。まさか『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』が伏線だったとは!
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