雨丘もびり

ブリッジ・オブ・スパイの雨丘もびりのレビュー・感想・評価

ブリッジ・オブ・スパイ(2015年製作の映画)
4.5
登場したとたん「ガンコな男が正義に目覚めて信念のもとに行動する話」って予感させてくれるトム=ハンクスすごい。
本当にそうだったし。

脇役たちのアザトい演技のなかで一層映える、主人公たち(ドノヴァン、アダム、パワーズ)の抑えた激情。胸を締め付けられる。

判事、所長、奥さん、息子たち、警察官。
私が思ったことを、ぜんぶ言ってくれる脇役(ドノヴァンに敵対する人たち)。
白状します。
私も何度、プライヤーを諦めようとしたか。
緊急事態において最優先されるのは"一身の安全"で、それこそ主張して当然の自然権だから。

それを、言葉や強固な態度で説得したり押し戻したりする超人ドノヴァンに、私が諫められ諭される2時間半だった。
140分、ずっと論破され続ける映画体験(笑)。
交渉のゴール(落としどころ)の設定が2歩3歩進んでる時点で、ドノヴァンの勝ち。
すっごく考えさせられるし、頭を使ったので、ひどく疲れて眠くなった。悪い意味では無く。

国益やアメリカの尊厳を掲げながら、頑なに譲らない自然法の遵守。
"一身の安全確保が相手の安全確保を保証する"という確信で、敵対者をじりじり説得してゆく。
話運びの重厚感が、すさまじい。

見終えた後に凄みが増すね。
監督の、この映画を撮らずに終われるか!という気概に溢れた一作。
ウケ狙いの一切ない真剣の振り下ろし。真正面から受けられて良かった。

ラスト、フェンスを軽々越えて走り回るストリートギャングを、車窓から眺めるドノヴァンの複雑な面持ちが忘れられない。

お疲れ様でした。ぐっすりお眠り下さい。私ももう寝る(@"@;;)